ファンタジーガーデンへようこそ  

fantasygardenmini_convert_20131122004536.jpg
* イラストはブロ友のみはゆーのさんに描いていただいたものです

          ご訪問ありがとうございます!

こちらはTOP記事となります。
最新記事は、この記事の下から始まります。

このブログには、ファンタジー小説やエッセイを投稿しております。
長編作品につきましては、完結していないものが多いため、はじめてお読みになる方には短編作品をおすすめします。
これまでの作品の傾向として、冒険や友情をテーマにしたものが多めですが、今後は恋愛をテーマにした作品も増やしていきたいと思っています。
どうぞ皆様、気楽にお立ち寄りいただき、作品を楽しんでいただければ幸いです。
(注、ブログ内の記事いっさいについて著作権は放棄しておりません。無断転載・転用はお控え下さい。)



                                   
スポンサーサイト
西の塔の広間に集う騎士の一人に声をかけ、リカルドは彼を屋敷の中庭へと誘った。

「お話とは何ですか?」

周囲を気にかけながら、リカルドがこたえた。

「あなたさまを見込んでお願いしたいことがございます。武術大会に出る前の腕ならしのつもりで、一つ仕事を請け負ってはもらえませんか」

「腕ならしということは、剣の試合ということですか」

青生地に金糸の縫い込まれた立派な身なりのその騎士は、人好きのする明るい表情をうかべて言った。

「詳しいことを話す前に、先にご承諾いただきたいことがあるのですが・・・」

対するリカルドは、水を差すような暗い表情で騎士を見つめ念をおした。

「この仕事を受けたことについては、いっさい他言無用でお願いしたいのです。また、仕事の依頼主が誰であるかも詮索無用にしていただきたい」

「わかりました」

意外にあっさりとした口調で騎士がこたえた。

「それと、ひとつお聞きしたいのですがー」

飄々とした騎士の態度に、リカルドは思いきってたずねた。

「この武術大会に参加した理由は何ですか?」

「無論、自分の腕前を試したいことが一番の理由です。そちらが聞かれたいのは、金や職にありつくためかということでしょうが、それは考えてはいません」

真顔でこたえた騎士に、リカルドが重ねて言った。

「ほお、では腕試しだけのためと?」

「レビアント卿の御厚意で騎士たちに報酬が与えられているのは知っていますが、わたしは辞退しようと思っています」

「それはなぜです。武術大会に参加する者すべてに与えられるものですから、ご辞退されるには及びません」

「このように屋敷に逗留させてくださり、食事まで振る舞って下さるのです。それ以上の御厚意は少々荷が重い」

「荷が重いとは?」

「領主殿にお仕えするのでなければ、不義理することになりましょう」

「それは戦になった時に、という意味でございますか」

「そうです」

「つまり、義理立てされている方がおあり、ということですね」

「ご詮索は無用に願います」
 
騎士は一瞬睨むような目をしてリカルドを見つめたが、すぐに表情を和らげた。

「なるほど。承知致しました」

リカルドは出身地を申し出なかったこの騎士の素性に興味を抱いていたが、この会話をつうじて、恐らく西南の地の出身であろうとの勘を働かせた。

西南の地は大陸をほぼ横断する街道の要所となっており、この地出身の者は諸国を旅する自由民が多いと聞く。

優れた商才を発揮し国を富ます一翼を担ってきたため、レビアント卿もそれ以前の国王も彼らを兵役につかせることはしなかった。

彼らには剣を取らせるより、商いに励ませるほうが国のためだと歴代の国王に思わせてきたのである。

かりに隣国と戦がおきても、彼らは商いのために敵国に攻め込むことはない。いつの世も戦が終われば、昨日の敵が今日は味方となるもの。

こだわりなく商いを行うためにも、彼らは誰かを敵に回すことを好まなかった。



その時、一陣の風が渦を巻くように枯葉を吹きあげ、噴水前の台座に腰をおろしたロディウスの前を通り過ぎていった。

ロディウスの脳裏に、アレクの虚ろな表情がうかぶ。

まるで魂が抜け落ちてしまったかのように無気力な目、哀しみをこらえた寂しげな横顔。

どう思い巡らしても、裏切られたのはアレクの方としか思いようがない。

ロディウスは心を奮いたたせた。

とにかく、真実を確かめることだ。

ロディウスの耳に、遠くの森でさえずる小鳥の甲高い声が届く。

一羽の小鳥でさえ、危険を感じれば仲間のためにさえずる事を怠ったりはせぬものだ。

まして親友のために策をめぐらす事に、何を恥じることなどあろうか。

迷いをふりはらように顔を上げ、ロディウスは神秘の湖がある森の方を静かに眺めた。


その頃リカルドは、騎士たちの中であらかじめ目星をつけていた数人の者の他に、新たに二人の騎士にも目をつけ声をかけていた。

彼らはみな年恰好はアレクとよく似ていたが、決闘の代役となれば、それなりに腕の立つ者の方が都合が良い。

老いたとはいえ、長年レビアント家に仕えてきたリカルドは、騎士を見る目には自信があった。

彼らの立ち居振る舞いをみれば、おおよその剣の腕前を見極められる。

そんなリカルドであったから、決闘を申し込んだあの少年は、実は剣をもったことすらないのではないかと怪しんでもいた。

若き主の本意をくめば、少年を殺めることなく、それでいてサムウエルが勝利を認める審判を下すような腕を持つ者でなくてはならない、というのがリカルドの考えであった。

予め目星をつけていた騎士は幾度か武術大会に参加していたため、剣の腕も人物の器もしれていたが、サムウエルから勝ちを認めてもらえるかという点になると、はなはだ疑問が残った。

それで、別な二人の騎士にも目をつけ声をかけたのである。


それにしても、少年を決闘の場に立たそうとしたその卑劣なやり口には激しい憤りを覚える。

アレクの人柄を知っての企てなら、命を落とさせようとの目論見があったとも考えられる。

森で出会った娘にひと目で恋し、さらにその娘にふられて今は失意の念に駆られているアレクの事情に通じていることを考えると、あの神秘の湖に土地勘のある者であろうとの推察もたつ。

アレクの命を狙った理由は何なのか。

娘がアレクに恨みを抱いているという話はねつ造だとしても、彼女と無関係とはいえぬかもしれない。

そんな思いから、ロディウスはある決意をした。

それは決闘の理由の真偽を確かめるため、アレクが恋に落ちたという娘に会ってみることである。

病み上がりの体で、深い森の奥に分け入り湖まで辿り着くのは容易なことではなかったが、娘の本心をどうしても自ら確かめてみたいとロディウスは思った。

ロディウスは屋敷の回廊へと出て、そこから広い中庭へとおりた。

夕べの強風で落ちた枯葉が、レンガ造りの石畳の上に散らばっている。

その枯葉を踏みしだきながら、庭の中央にすえられた噴水へと歩いて行く。

ここはロディウスが、一人で考え事をしたいときによく来る場所であった。

まだ幼かった頃、厳格な父に叱られここでしょんぼりしていると、見かねた使用人のリカルドが、優しく声かけしてくれたものだった。

高齢だった父は、ロディウスがまだ剣術を習い始めた少年の頃に他界した。

老衰という言葉を聞いたのは、この時が初めてだった。

それほどの年なのにロディウスが生まれ、周囲からロディウスの母に疑惑の目が向けられた。

二度目の妻であった彼の母が、ひそかに別な男との間にもうけた子なのではないかという噂も流れたようだったが、亡き父はそれをきっぱりと否定したという。

厳格な性分は、腹違いの長兄にも受け継がれている。

ロディウスはときおり、兄であるレビアント卿に父の面影を重ね合わせることがあった。

兄は決闘に不正が行われたと知ったとき、自分を許してくれるだろうか。

たとえ友を救うためとはいえ、騎士としての矜持を思えば、許し難い行為に違いない。


「リカルドか。武術大会に参加する騎士たちの中で、アレクに年恰好が似ている者たちを集めてくれないか。ただし、決闘の件でわたしに話しかけてきた例の二人の騎士には知られないように注意してくれ。彼らに知られると少々まずい」

年老いた使用人リカルドは、思慮深い眼差しで若き主を見つめた。

「仰せのとおりに致します。ほかにご用はございますか?」

「わたしがアレクの偽者を決闘の場に立たせたと分かれば、兄上は決してお許しにならないだろう。この事はわたしとおまえの二人だけが承知していることにせねばならぬ。よいな」

ロディウスを幼少の頃から知っているリカルドは、突然の内密の依頼に少なからず驚き、かつ喜んだ。

自分を信頼すればこその依頼である。

主レビアント卿に秘密とはいえ、幼き頃からお傍に仕えてきた者ならばこそと思うと、心底誇らしくもあった。

「ご親友のお命にかかわること。無論、承知致しております」

リカルドの返事に安堵したロディウスは、さらにこう命じた。

「例の少年と一緒にいたという老騎士のことを詳しく調べておいてくれ。不審な点があるようなら、捕らえて牢に入れてもかまわぬ」

「少年はどう致しますか?」
 
リカルドが尋ねると、ロディウスは少し考えこみ、それから言った。

「決闘は行わねばならぬ。老騎士と引き離し、決闘場までおまえ自らが同行して見届けるようにしてくれ」

「承知致しました」

リカルドは短くそう応えると、すぐに踵をかえした。

そして足早に、騎士たちの寝起きしている西の塔へと向かったのであった。

さてリカルドが立ち去ると、ロディウスは自室に戻り、少年の同伴者であった老騎士の処遇について考えを巡らした。

この決闘騒ぎを起こした張本人は、おそらくあの老騎士に違いない。

何の恨みがあってアレクを陥れようとしたのか、まずは、その真意を問いたださねばなるまい。



WHAT'S NEW?