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ユノーは、大きな樫の木の根元にある彼のねぐらから頭を出し、用心深く外敵に注意しながら周囲を見回した。じき太陽も真上に射しかかる。いくらのんびり屋の友人とはいえ、もうそろそろ姿を見せてもよさそうな刻限だ。ユノーは舌打ちした。
(レグルスがやって来る前に、我が家に到着してくれるといいがー)
 ユノーは気がかりな様子で、ファンタジーガーデンの方を振り返った。
 ユノーの友人はとても風変わりな生き物で、初めて目にした者は決まって腰を抜かしてしまう。決して相手を襲うような凶暴さなど微塵も持ち合わせない、いたって温厚な生き物なのだが、その見た目の恐ろしさから、そういう反応を取られてしまうのだ。
 ユノーはせっかく友人として紹介しようと招いたレグルスを、むやみに驚かせたくはないと思っていた。しかし明け方には到着する予定だったものが、もう昼間近になってしまった。ユノーはしだいに気を揉みはじめた。友人がユノーのもとを訪れるのは随分と久しぶりのことであった。もしかしたら、道に迷ってしまったのかも知れない。そんな不安が彼の脳裏を掠める。
 折もおり、ユノーはたまたま近くの木の梢に飛んできてさえずり始めた赤い小鳥を見つけ声をかけた。レグルスがここに到着する前に、彼に湖のほとりにある姉妹岩へと向かうよう伝言を頼もうと考えたのである。
 小鳥はよくこの辺りを飛び回っていたので、ユノーとは以前から顔見知りであった。彼はユノーが事情を話すと、愛想良く二つ返事で承知した。
「君が行ってくれると、とても助かるよ!客人が遅れているので、わたしは様子を見に行こうと思うんだ。レグルスには、くれぐれも姉妹岩で待っているようにと伝えておくれ」
 ユノーは、この森では一目置かれるもぐらであった。大層な高齢らしかったが(実際の年齢を知っている者はなく、本人も決して明かそうとはしなかった・・・)、非常に賢くかつ勇敢で、かつて森で大火が起きた時、いち早く森の動物たちにそれと知らせ、自分は炎を恐れることなく走り回って、逃げ惑う獣たちを安全な場所へと導き避難させたという英雄伝の持ち主でもあった。
 小鳥は高らかな声で歌いつつ空へとはばたくと、ユノーの頼みに応じるため、ファンタジーガーデンの方へと向かって飛んで行った。
 やれやれ、と胸を撫で下ろし、ユノーは赤い小鳥の飛んで行った方向とは反対の道へと歩き始めた。


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 彼女の名前は真子(まこ)。
 1歳11ヶ月になる、お転婆ざかりのキャバリア・キングチャールズ・スパニエルである。
 趣味はもっぱら散歩とボール遊びーー何処にでもいる、いたってごく普通のペット犬である。
 だが実は彼女には、ある秘密があった。
 彼女のママは……魔女だったのであるーー

「ママぁ!ねぇ~ママってばぁ!」
 真子は、朝早くからパソコンばかり見ているママにしびれをきらし、うるさく吠えたてた。
「もうずっ~と、パソコンばっかりやってるでしょう!少しは真子とも遊んでよ!」
 すると、いかにも迷惑そうな顔で頭を横に振り、ママが叫んだ。
「うるさいわねぇ!今、魔法で遊び相手を出してあげるから、ちょっと待ってて」
 けれど真子は不機嫌そうに、くぐもった声で「ワゥ~ワゥ」と唸り声を上げる。真子は、ママが魔法で出してくれる動くお人形と遊ぶのが嫌いだったのである。
「お人形じゃ嫌!ママと遊びたいの」
 ママは椅子の周りをくるくる回りながら吠えたてる真子にほとほと閉口し、ついに椅子から重い腰をあげた。それを見るや、真子は大喜びで吠え、尻尾を振りながらママに抱きつく。
「ママ、ボール遊びがいい!」
 彼女はママが遊んでくれるものとばかり思って、勢いよくママの前でくるりと一回転してみせた。遊ぼう!のポーズである。だが大声で叫ぶ真子を尻目に、ママは冷ややかに眉をひそめ、右手の人差し指をくるりと回して呪文を唱えた。
 たちまち、おさげ髪の小さな女の子が現れた。ママが魔法で呼び出した動くお人形である。だが、お人形といっても、見た目は人間の女の子と寸分違わない。女の子は真子の前にかがみこむと、遊びましょうと声をかけた。真子はがっかりして耳をうなだれた。
「そんな情けない顔をするのはやめてちょうだい。真子」
 ママはさすがにしおれた様子の真子を見て気がとがめたのか、そう言って真子の頭を撫でた。
「もうちょっとしたら、遊んであげるからね。他のうちのワンちゃんは、喋っていることを飼い主に分かってもらえないから、相手してもらえない時はじっと静かにケージに入ってるか、お昼寝したりしてるものなのよ。真子は分かってもらえるだけ幸せなんだから、わがままを言っちゃだめよ」
 だがそれは、所詮飼い主の言いぶんというもの。真子が納得するわけもなく、彼女はお人形の女の子がボールを転がし遊びに誘っても、素知らぬ顔をしてふて寝を始めた。
 ママは、やれやれと呟きながらも、またパソコンに向かう。
「魔法が使えても、真子には通用しないわねぇ」
 そうぼやきつつ、しばらくパソコン画面を見つめていたママだったが、じっと自分に視線を注いでいる真子がやはり気になるらしく、一つ溜息をついて立ち上がった。
「真子ちゃん。おやつあげるから、それ食べたらしばらくお昼寝しててちょうだいね」
 これを聞いて、真子は目を輝かせママに駆け寄る。
「まったく……。これだから、真子はちょっぴりおデブになっちゃうのよねぇ」
 するとすかさず、真子はママに言い返した。
「だったら、1日2回お散歩に行ってもいいよ!」
 途端にママが顔をしかめ、ばつの悪そうな声でつぶやく。
「それは、ママが嫌なのよ……」
「じゃあ、真子がおデブさんでもしょうがないね!」
 あっけらかんとした真子の言い分に、ママは諦めたように「そうね」と答えた。
 真子のママは徹底した出不精である。魔法が使えるから家事も自分ではやらない。買い物だって最近はネットショッピングですませている。
 で、何をしているかというと、もっぱらパソコンいじり。
 夜パパが帰ってきてパソコンを使わせてーーと催促しない限りは、日がな一日パソコンデスクに座りっぱなしだ。
 そのくせパパが帰ってくると、パパに「真子ちゃんの相手してやってよね。私は昼間ずっと相手してるんだから」なんて嘘ぶく。
 だけどパパは普通の人だから、真子の言ってる言葉が分からない。ママの言う通りだなって、すまなさそうな顔をして真子の相手をしてくれる。真子はいつもそんなママをずるい!と思っていた。
(真子にも魔法が使えたら、パパがわたしの言葉が分かるように呪文を唱えるのに)
と彼女はいつもそう思うのだった。

            キャバリア ブログ HOD

      イラストは、はまゆうさんのブログ素材をお借りしています         
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 いきなり番外編?と思われる方も多いとは思いますが、KURAMAの本編は書籍化を目標に現在執筆中です。そのため残念ながら、ブログ掲載ができません。
 ただ、この作品は個人的にも登場人物に思い入れが深く、番外編としてでも是非皆様に読んでいただけたらと思い掲載することにしました。毎回1話完結の短編となります。気楽に読んでいただくために、ややコメディタッチになっておりますが、ときどきシリアスな物語も掲載する予定でおります。
 皆様に楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ー登場人物紹介ー


  鞍馬
 鞍馬山の大天狗。(普段は鳶の姿をしている)
 鳶に姿を変えているとき、稲荷(稲荷神の眷属である百狐)に襲われ大怪我を負うが、通りがかった壇上 翼に助けられ、それ以後檀上家のいそうろうとなる。


  比叡
 比叡山の天狗。
 鞍馬を追って東京の檀上家に下宿する。普段は大学生の姿をしているが、たまにカラスに姿を変える。



  高尾
 高尾山の尼天狗。比叡の片思いの相手。高尾の意中の相手は……?


  檀上 翼
 都内有数の進学校に通う高校1年生。
 京都観光の途中で鳶である鞍馬を助ける。
 鞍馬が天狗であることを知っているが、鳶の姿のまま自室にいそうろうさせている。


   稲荷

稲荷神の眷属である白狐。
2000年を生き抜く妖狐だが、普段は高校生の姿をしている。
鞍馬を助けた翼に報復するため、彼の学校へと転校してくる。


   護法魔王尊

鞍馬寺の尊天のひとりで、鞍馬の主でもある。
見た目は16歳の美少年。そのまま年をとることのない永遠の存在である。


   ダーキニー 

 稲荷明神の本尊であるだきに天。稲荷の主。
ダーキニーは、もとは人の心臓を食らう夜叉であったため、怒りをかうと祟り神ともなる。
ときおり霊孤の姿となって徘徊する。



   木下のご隠居
 檀上家の近所に住む一人暮らしの老人。
 陰陽道に通じ、鞍馬や比叡の正体を知っているが口をつぐんでいる。
 謎の多い人物。



   檀上容子
 檀上翼の母親。翼が5歳のときに夫を交通事故で亡くし、以来、家の空き部屋を他人に貸すなどして生計を立てている。おしゃべりで世話好きな社交家。やや涙もろい面も。


  




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 薫は、動物病院の待合室のベンチに、ひとり腰かけていた。平日の午後三時過ぎ。病院から飼い犬の病状が急変した連絡を受けて、急ぎ駆けつけたのである。しばらくして看護師がやってきて薫は手術室にとおされた。
 手術台の上に、金色の毛並みの大きな犬が横たわっている。担当の医師が青ざめた薫の顔を見て、申し訳なさそうに言った。
「ーさきほど急に容体が変わり、意識を失ってしまいまして」
 医師は薫の飼い犬が、もはや手の施しようがないことを告げた。薫は悲痛な面持ちで金色の犬の頭にそっと手をおき、慈愛の眼差しを注いだ。薫の心には憐憫の情があふれ、深い後悔の念が胸をしめつけた。
ーずっと、一緒にいてやればよかった。

 薫の飼い犬は、体は大きいが至って温厚な性質で非常にひとなつっこかった。いつも笑っているような顔(これは薫の友人の言である)の犬である。神経質で短気な性分の薫は、いつもおっとりとしていて、どこかとぼけたような表情のこの犬といると、不思議と癒された。だが世の飼い犬の常と言おうか。彼らはひたすら主に待たされる宿命にある。薫の飼い犬も、やはり主を待ち続ける日々を送った。会社に出かける主の後ろ姿、たまの休日さえ飼い犬を残し遊びに出かける主の顔を、金色の犬はいつも悄然として見送った。
 そうして七年が過ぎ去ったある日、突然金色の犬は重い病気にかかってしまった。余命一カ月。薫は医師にそう宣告された。それからの一カ月。薫は心を改めて、できるかぎり飼い犬のそばにいるようにした。いつも笑っていた金色の犬は、いつしか笑わなくなっていた。薫は苦しいのかも知れない?といぶかしんだ。この犬が笑わないなんて、よほど痛みがひどいに違いない!病院で処方される痛み止めの薬だけでは頼りなく思えて、薫は日夜、天に祈るようになった。そうだ!この犬には天使の名前をつけたのだから、天使になら祈りがつうじるかも知れない!薫はそう思い立ち、大天使に向かって祈りを捧げた。
 犬が苦痛を感じませんように!死への恐怖に怯えませんように!
 そうしてちょうど一か月が過ぎた日、金色の犬は突然ばたっと床に四つん這いになって倒れた。薫は金色の犬を抱き上げた。全身の力が抜けた犬の体は、想像以上に重く感じられたが、薫は友人の助けを借り、なんとか犬を車に乗せ病院へと運んだのだった。それから数時間後、金色の犬は容体が急変し意識を失ったのである。
 

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 ある日の朝、目覚めたメリルさんは驚いた。
 いつもなら彼女の横にぴったりとくっついて寝ているはずの愛犬の姿がどこにも見えないのだ。彼女はあわててベッド脇の小窓から身を乗り出して外を眺めた。メリルさんの寝室は家の3階、東塔のてっぺんにある。ここはちょうど屋敷の正面にあたっていて、広いファンタジーガーデンが一望できる彼女のお気に入りの場所にもなっていた。
「レグルス!レグルス!」
 メリルさんは何度も名を呼び、小さな茶色の子犬の姿を探した。しかし目を皿のようにしてガーデンの隅々まで眺めても、緑の木々の葉蔭に隠れているのか一向に探し当てることができない。彼女はひとつ溜息をついて庭のメインツリーへと目を向けた。すると一羽のカラスが、まるで彼女の溜息を聞きつけたかのように、羽音をたてながらこちらへと近づいて来た。
「イジー、お願い。レグルスを探して帰ってくるように伝えてちょうだい!」
 メリルさんがそう声をかけると、カラスは気のりのしない声で答えた。
「ーメリルさん。レグルスなら池のふちを散歩しているのを見かけたよ。きっともぐらのユノーに会いに行ったに違いない!そうなったらしばらくは帰ってこないよ。なにしろユノーはのんびりやだからね」
イジーの言葉にメリルさんは少し困ったような顔をしたが、お腹がすけば返ってくるわねとつぶやき、窓枠にとまっているイジーの頭を優しく撫でた。
 イジーは、メリルさんが何か気に病んでいるなと思った。
 実はこの数日、彼は外を眺めてはもの思わしげに大きなため息をついているメリルさんの姿を何度となく目にしていたのである。しかしイジーは、不用意にメリルさんに問いただすつもりはなかった。それは、メリルさんがごく小さないざこざにも、いつだって一人心を痛める優しい心の持ち主だと知っていたからである。まず彼女の気がかりの原因を突き止め、その解決策を見いだせたら、その時メリルさんに話しかけよう!イジーはそう考えていた。
「ねえイジー。私と一緒に朝食はいかが?」
 メリルさんは笑顔でイジーに話しかけた。イジーは勢いよく「カー!」と一声鳴くと、翼を大きく広げばたつかせてみせた。これが、彼らからす特有の喜びの表現なのである。メリルさんはてきぱきと身支度を整えると、朝食の準備をするため1階の台所へと向かった。東塔のらせん階段を足早に降りていくメリルさんの後ろから、イジーがゆったりと円を描くように滑空してついていく。
 台所に入ると、メリルさんは壁に整然と並べられてある鍋の一つを手に取った。みごとに磨き上げられ輝いているその鍋を、イジーはうっとりと眺めた。きれい好きなメリルさんの持ち物は、どれもよく手入れされ輝いているものが多い。イジーにはその一つ一つが、貴重な宝物のようにうつるのだった。メリルさんは鍋をこんろの上におき、足元の水がめから水をすくって入れ火にかけた。その様子を見ていたイジーが、思い立ったように声をかけた。
「メリルさん。何かお手伝いしましょうか?」
 メリルさんは上機嫌で答えた。
「まあ、ありがとう!それじゃあ、奥の食糧庫から野菜を取ってきてもらえるかしら?」
 イジーは2,3度大きくうなづくと、驚くほどのスピードで器用に壁や天井をよけて飛びながら、まっすぐに台所の奥にある食糧庫へと入っていった。メリルさんが感心しながらその後ろ姿を見送っていると、ふいに玄関の呼び鈴が鳴った。
「こんな時間に誰かしら?」
 メリルさんはそう言って、壁の柱時計を見上げ首を傾げた。
 するとまた呼び鈴が鳴った。
 メリルさんは怪訝そうな声ではーいと返事をしながら鍋の火を弱火にした。そして、ゆっくりと玄関へ行き扉を開けた。
 扉の向こうには、一人の老人が立っていた。老人は自分は郵便配達人だと名乗り、メリルさんに1通の手紙を差し出した。

 

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