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それは、A4サイズの厚めの茶封筒だった。
郵便受けに入っている小包をじっとのぞき込みながら、僕は彼女がずっと待ち望んでいた郵便物はこれに違いない!と、そう直感したのだったーー。

 彼女がこのマンションに引っ越してきたのは、約一月ほど前のことだった。8月末締め切りの原稿に追われ、部屋に缶詰め状態になっていた僕は、突然鳴ったチャイムを煩わしく感じながらも席を立ち、しぶしぶ部屋のドアを開けた。
 その時の僕は、さぞかし不愉快な表情を浮かべていたに違いない。ドアの向こうでにこやかな笑顔を浮かべて立っていた彼女の顔が、僕を見た途端表情をひきつらせたのを今でも覚えている。だが、彼女は生来が明るい性格だったのだろう。そんな気まずい初対面であったにもかかわらず、その後も通路ですれ違うたび、彼女はいつでも屈託のない明るい笑顔を向けてくれたのだった。そんな爽やかな彼女に、僕が心惹かれるのにそう時間はかからなかった。
OLをしているらしい彼女は、毎朝きっかり同じ時間に会社へと出勤して行く。僕はその時間を見計らって、マンションの出入り口にあるゴミ捨て場へと下りて行くようにした。そうすれば、自然彼女と顔を合わせることになり、挨拶をかわせるからだ。こうして初対面での僕への悪印象も、少しは払拭できたのではあるまいかと自負しはじめていた矢先のことであった。
 たまたま編集部での打ち合わせを終え帰宅した僕は、玄関ホールの隅にある人気のない郵便受けの前でたたずむ彼女を見かけた。
彼女はどこか思いつめた顔で、一人自分の部屋の番号が記された郵便受けを見つめている。何となく声をかけづらくそっと様子をうかがっていると、彼女は息を整えるように大きく一つ深呼吸をした。そして恐る恐る鍵を開けて中の手紙を取り出したのだが、お目当てのものがなかったのか、落胆したように小さな溜息をもらした。
その後も、僕は何度か同じような光景を目にした。そうする内マンションに出入りするたびに郵便受けの中身が気になるようになり、人のいない時には、つい彼女の部屋番号の箱に何か入っていないか覗き見るようにまでなっていった。
ーーそして、そんなことが続いたある金曜日の夜のこと。ほぼ定時を守って帰宅する彼女が、その日に限っては夜遅くまで帰って来なかった。僕は近所のコンビニへ出かけようと玄関ホールまで降りたのだが、ちょうどそこへ小包を抱えた郵便配達人が彼女の郵便受けに小包を入れるところに出くわした。僕は自分の郵便受けを確認するような素振りで郵便配達人が去るのを待ち、いけないこととは思いつつも彼女の郵便受けの中を覗いてしまったのだった。
 中に入っていたのは、分厚い茶封筒の包みであった。
見た瞬間僕は、正直中に何が入っているのかこっそり開けてみたいという衝動に駆られた。だが、万が一小包の中身を勝手に見たことが発覚でもしたら・・・、そしてそれが自分ではないかという疑惑がもたれでもしたら、僕に対する彼女の印象は最悪のものになってしまうだろう。そう思うと、なかなか勇気が出なかった。
その夜、僕はまんじりともせず、帰宅してくる彼女が荷物を見てどんな反応を見せるだろうかと、自分の部屋の玄関ドア越しに向かいの部屋の様子に聞き耳をたてていた。
しかし・・・夜遅く帰宅した彼女は、普段以上に静かに部屋のドアを閉めたきり、その後、声をあげるどころか物音一つたてることはなかったのである。
 翌朝、僕はいつもの時間にゴミ置き場へと降りて行った。土曜日にもゴミの収集はあるが、会社の休みの日には彼女が姿を見せることはない。分かってはいたものの、もしかしたらゴミを捨てにくるかも知れない・・・そんな淡い期待を抱いていた。だが、それはやはり期待外れに違いなかった。僕はしばらく待って無駄だと悟り、持ってきたゴミを分別して収集箱に入れ部屋に戻ろうとした。ところが箱のふたを閉じようとしたその時、僕は一瞬可燃ゴミの中に気になるものを見つけて手を止めた。
(これは!・・・あの茶封筒じゃないか?)
 何とそこには、昨日見たあの彼女あての小包が無造作に投げ捨てられていたのである。明らかに開封された後はあったものの、封筒の厚みからしても、中身はほぼそっくり捨てられているように見受けられる。僕は周囲に人がいないのを確認すると、茶封筒を拾い上げて小脇に抱えこみ、そのまま小走りに階段を駆け上がって自分の部屋へと舞い戻った。

 
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 午後4時過ぎ。待ち合わせの時間より早く駅に到着したため、バスロータリーの向かい側にあるファーストフード店に入る。
 僕はあまりファーストフード店は好きではない。ただ、今の時期に販売されるシェイクは結構気に入っていて、短時間の時間つぶしにはちょうど良いだろうと入ることにした。
意外にも店内は、この時間にしては混雑していた。暑さしのぎの客の入りもあるのだろう。シェイクを乗せたトレーを片手にひととおり店内を歩いて空いている席を探すが、気に入った場所は見当たらなかった。やむなく、1階の窓際にある席を選んで腰掛けることにした。気おくれするほど隣席との間隔が狭く、体を横にしてすり抜けようとしたがやはり隣のテーブルに足がぶつかってしまった。厳しい視線を背中に感じ、焦って胸ポケットの携帯電話を取り出しメールをチェックしている風を装う。隣の席に座っていた70代半ばぐらいの老婦人たちは、少し間をおいて再び会話しはじめた。
聞くとはなしに、二人の会話が耳に入る。
「前の離婚も浮気が原因だったっていうのに、また浮気してバツ2になるなんてねぇ・・・。そりゃあ、本音を言えば女房がいても他の女性を好きになることはあるでしょうけど、そこを自制するのが常識ある大人の取るべき行動じゃない?」
 そう言ってずれ落ちそうになる眼鏡を指でつまみ上げながら、斜め向かいに座っている婦人が溜息をついた。
 なんとなく居たたまれぬ気持ちになる。それでなくても人が密集している店内は、隣人の肌の熱気さえ伝わってくるようなむし暑さがこもっていてあまり居心地がよくない。無論冷房は入っているのだが、さっきまで炎天下を歩き回って汗だくになっている体を瞬間冷房してくれるほどの冷風ではない。
 僕は鞄の中に扇子が入れてあったのを思い出し、すぐさま取り出して勢いよくあおぎ始めた。一瞬隣席の二人にちらっと横目で睨まれたが、素知らぬ顔でやり過ごす。
「山本さんのお坊ちゃんは、結婚して何年?」
 ややあって僕の横に座っている婦人が、向かい席の眼鏡の婦人に話しかけた。
「息子が今年51だから、かれこれ20年ぐらいになるわね」
 無表情にそう答えて、ふいに彼女は話題をそらした。
「ーーわたしね。今の主人と結婚する前、好きな人がいたの」
 

 
来月の中旬、わんちゃん旅行に行こうと現在計画中です。
実は北海道が第一希望なのですが、わんちゃんを飛行機に乗せても大丈夫かやや心配で・・・。
ちょっと調べたら、夏場の飛行機に乗せて亡くなったわんちゃん(ちわわ)がいたとかで、9月いっぱいは飛行機には乗せられないのだとか。行く時期は10月の予定とはいえ・・・どうしよう?と悩んでいます。
わたしは宮崎出身で、これまで北の方面に旅行する機会がなかったので是非行ってはみたいのですがーー

さて話は変わりますが、これから不定期で日記風の小説を書いてみたいと思っています。日記の形式は取りますが、もちろん完全なるフィクションです。その都度、登場人物を思いつくまま設定し、回によっては主人公の登場しない話なども書こうと思っています。原則的に1話で読み流していただける作品にするつもりですので、気軽に読んでいただけたら幸いです。
ーータイトルは「執筆の合間に」。
主人公が作家という設定で、彼が出会ったさまざまな人々との出来事を日記につづっていくという物語です。
またこの作品では皆様からのお題を募集したいと思っております。
登場人物の設定や、描かれる舞台など自由にご応募下さい。
楽しみにお待ちしております^^

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