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リビングの窓から外を眺める時、ふと向かいの家に目がいく。
この間挨拶に来た女の人が、部屋のブラインドを開けはしないかと、つい心待ちに見てしまう。

引っ越しの粗品を持って来たその女の人は、あたしを見て目を細めた。
「かわいい~!」って言いながら、あたしの頬を両手でそっと包んだ。
「実家で、ずっと大型犬を飼っているんです」
ママに笑顔を向け、溌剌とした口調で話す彼女。
年はママの二つ下。
お互いの年が近いと分かった途端、ママは弾んだ声であたしたちの話をした。

いつものことだけど、ママはあたしが一番世話が焼けると人に話す。
パパにもそう言って愚痴をこぼすけど、パパはあたしの味方。
あたしの頭を撫でながら、「パパは、ノアが大好きだからね」と優しく声をかけてくれる。
「まだ仔犬なんだから」とママを宥めながら、あたしの遊び相手をしてくれる。

そんな時、ママは複雑な顔であたしを見る。
うまく御せないのは、自分のやり方がいけないのだろうか、とでも考えていそうな顔つき。

ママはパパと違い、いつもあたしを止めることばかり考えている。
ちょっと跳びあがっただけでも、ノーと言う。小さなわんこがじゃれても何にも言わないのに、あたしがじゃれようとすると大騒ぎ。
そんなの、不公平って思うけど・・・、あたしはじっと我慢する。

あたしがもっと小さかった頃、ママに甘噛みしようと跳びつき、腕に大きな傷を負わせた事があった。
ママは大声で痛がって、すぐにその場からいなくなった。
そしてそれ以来、ママは部屋には来ても、おもちゃで遊びなさいというばかりで、あたしに近づかないようになった。

寂しかった・・・。
ただ、ママに甘えたかっただけなのに。

今はもう甘噛みしたりはしないから、ママもあたしを避けたりはしないけど、あんな態度を取られるのは辛い。

あたしはいつでも、楽しいことはないかと探しているだけ。
でもそれが、ママには大抵困ることばかり・・・らしい。

お散歩している時、道で出会った人たちに、こんにちはと挨拶すると、ママは迷惑そうにあたしのリードを引っ張る。
「ご挨拶しなくて良いから!」って、道の反対側へあたしを連れていこうとする。
どうしてママは、あたしが他の人に近づこうとするのを嫌うのだろう。
疑問に思って、一度真子に訊ねたことがある。
すると真子は、「他人が、みんな良い人ばかりとは限らないでしょ」と言っていた。

真子は警戒心が強いし、慎重な性格だから、そう思うのかな。
ママにも、真子は優秀な番犬と評価されている。

そういえば、ママは通りすがりの人たちに挨拶はするけど、いつでも表情は硬くてぎこちない。
何だか、緊張しているように感じる時もある。
やはり、真子の言う通りなのかな。

もの思いにふけっていると、突然、向かいの家のブラインドが開いた。
あの女の人だ!
ぼんやりと窓の外を眺める彼女に、じっと視線を送る。
もう少しで気づくかも、そう思った矢先、、ブラインドは再び閉められ、姿が見えなくなってしまった。

にわかに、寂しい気持ちに駆られる。

ママが言う通り、他の人の所へはあまり行かないようにしようかな。

冷たくされたら、がっかりするから・・・。

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こころとの出会いは中学の時。
たまたま、席が隣り合わせになったのがきっかけで親しくなった。
話しかけてくれたのはこころの方。
私の通っていた小学校が小さくて、同じクラスには知り合いがいず、とても心細くなっていた時だった。

大きな瞳で私をのぞきこむようにして、話しかけて来た。
「友達になろう!」
そう言われた時、本当に救われた思いがしたのを今でも覚えている。

こころの通っていた小学校は大きかったから、クラスに友達も多かった。
男友達とも屈託なく話せ、明るくて社交的な彼女をどんなに羨ましく思ったことか。

どうして、私みたいに地味な子に声をかけてくれたのか、今でも不思議に思う。
面白い子なら他にもいっぱいいたのに。
こころは優しい女の子だった。

二学期になってすぐ、学級新聞を作ることになって、みんなでアイデアを出し合った。
その時、思いがけずこころが私に意見を求めた。

彼女は、普段私がノートに物語を書き留めているのを知っていて、それを新聞に載せたら良いと考えていたらしい。
でも、突然だった私は困惑して、何も言うことができなかった。
見かねたこころが、みんなの前で私の書いている物語のことを紹介してくれた。

他人に、趣味で書いているものを見せたのはその時が初めてだった。
恥ずかしくてたまらなかったけれど、読んでくれた友達の中にはとても驚いた顔で褒めてくれる人もいて。

思えば、あの事がなければ、今の私はいなかったかも知れない。
自信を持つという事が、自分の可能性を唯一開く扉であることを学んだ出来事だった。

中学卒業とともに、こころは自分の道を見つけ、遠い異国へと旅立って行った。
私は日本にいて、時々ふっと彼女のことを思い出しては、あの日の彼女の行動に深く感謝している。

優しさは、誰もが心にしまっている宝物。
それを信じられるきっかけを作ってくれたこころ。

偽らず歩いて行きたい。
誰が何と言おうが、人は天使さえかしづく尊い存在。
その魂は穢れなく、心は天を仰ぎ見ていると。

真心を忘れず、優しさを絶やさず、
人を愛することを止めずに、生きていきたい。

あなたはそれを教えてくれた。





はじめまして。

私の名前は真子。

キャバリア・キングチャールズ・スパニエルの女の子4才です。


我が家はワンコの三姉妹。

私はその長女で、ママたちが留守の間はいつも下の子たちの面倒を見ています。

でも二頭ともまだ仔犬なので、とても大変。


次女のノア。10か月のラブラドールレトリーバーです。

彼女はただいま第一次反抗期の真っ最中。

ちょっとママがノアちゃんを無視しただけで、壁をかじったり、カーペットを噛みちぎったり。

その度にママは悲鳴を上げてノアを叱っています。


末っ子のショコ。5か月のビーグルです。

何をするにも愛らしい仕草を見せるショコ。その姿に、ママは目尻が下がりっぱなし。

でも油断すると、突如甘噛みするちびっこギャングに変身!

くわばら、くわばら。


そんなちびっこたちに手をやきながらも、ママはここのところ、いつもご機嫌です。

パパがお仕事の都合で、1年ほど前から単身赴任をしているのです。

毎日自由を満喫できるから、ママは幸せいっぱいなんだそう。


ママは小説家というお仕事をしています。

だからパパのお世話で忙しかった頃は、いっつも眉間にしわを寄せていました。

でも今は、パパに気兼ねせず思い切り仕事ができるから、とても嬉しそうです。

私たちはパパが居てくれるととっても嬉しいけど、ママはそうでもないのかな・・・。


話は変わって、このたびママに新しいお仕事が入り、私たち3姉妹もお手伝いすることになりました。

というのも、ママが私たちの日記を題材にした小説を書くことにしたからなんです。

ドラマチックな展開なんてないよってママには言ったけど、

じゅうぶん面白いから大丈夫よって、ママは笑ってこたえました。

そうかなぁ、私たちの日記がそんなに面白いかな・・・。

そうは思いましたけど、ママのたってのお願いなので、お手伝いすることにしました。


それではみなさま、「うちの三姉妹」をどうぞよろしく!


            🌹🌹🌹


  第一話


「また、バラを噛んでる~!」

ママの悲鳴に、ノアはにんまりとして後を振り返った。

大切なバラを齧られ、顔面蒼白なママを見て、楽しそうなノア。

ママの落胆する顔をみるのが、ノアには快感らしい。可愛い顔をした小悪魔・・・。

「どうしていつも、いけないって言っていることばかりするの!」

ママは怒りに顔を真っ赤にし、口惜しそうに持っていたリードを大きく振り回す。

それならリードを外さなきゃいいのに、と私はいつも思う。

でもママは、ついノアを自由にしてやりたくて、リードを外してしまうのだ。

振り回されても、可愛くて仕方ない・・・。

親心とは思うが、その結果追いかけまわして叱っていたのでは意味がないのでは、とも思う。

ノアの方が断然足は早いし、追いかけっこで勝てるはずもなく。

ママが後を追いかけてくるのが、どんなに嬉しいか分からないのだろうか。

ショコだって、にこにこしてママと一緒に走っているのに、

ノアが楽しんでいるのに気づかないとは。

母性とは、愚かなものだと思う。

私もノアがリードでつながれているのを見ると、ちょっと不憫に思う事もある。

けれど大きくて力も強い大型犬。

庭の生垣に張られた脱走予防のネットなど、その気になれば簡単に破ってしまえる。

花壇に柵をめぐらし、大切に育てている丈の高い花にしても、綺麗に咲いた途端、跳び上がって齧り取ってしまう。

そんなノアを野放しにするのは、やはり無謀でしかない。

いくらドッグランにしたからといっても、

私みたいに、行儀よく庭で遊べるワンコでなければフリーにするのは無理な話。

それでもママは、やはりノアを庭に放してやりたいと思っている。

「真子にノア、それからショコが、みんなで楽しそうに庭で遊ぶ姿を見ている時がママは一番幸せなの」

ママはそう言って、私の頭を優しく撫でる。

いつか大きくなったら、ノアもショコも聞き分けの良いワンコたちになるだろう。

けれどもママは、目の前で元気に走り回る、手に負えない仔犬たちが愛おしくてならないのだ。

手がかからなくなる日がきたら、きっと寂しさを感じてしまうほどに。

ママは私が小さい頃のことをよく思い出すと言っていた。

しょっちゅう甘噛みをして困らせていたそうだ。

今度、ママを甘噛みして喜ばせてあげようか、そんな事を考えたりした。


夕べからやけに風が強い。
季節の変わり目、というやつか。

丘の上に建つこの洋館が気に入り購入したのは、あるまとまった金が入ったからだった。
だが住み始めてみると、都会暮らしが長い自分には何かと不便に感じることが多い。

それでも、住めば都ということわざどおり。
最近は、しみじみ居心地の良さを感じ始めている。

何より良いのが、何事もない日を過ごせるということ。

何事もないからといって、別に退屈しているわけではない。
朝は小鳥のさえずりで目をさまし、
ベッド脇のプレイヤーで、お気に入りの古いレコードをかける。

毎日時間に追われ、多忙な毎日を過ごしていた自分には、これはこの上ない贅沢だ。

何事もない日を過ごすこと。
実はこれが、僕の今の仕事だ。

さる研究機関からの要請で、僕は何もせずに過ごすよう指示されている。
いっさいのストレスを感じず暮らした場合、人の心身にはどのような変化が現れるのか、
それをデータ化しようという実験の対象に選ばれたのだ。

だから、家でのんびり過ごす。
たまには、気分転換に外出もする。
家事など身の回りのことは、研究機関に雇われた家政婦さんがやって来て全てやってくれる。

まさに夢のような暮らしだ。
とはいえ、最初は戸惑いがあって、この生活にあまり馴染めなかった。
話し相手がいず、孤独を感じたこともあるだろう。

しかし半年も経つと、状況は一変。
この暮らしが実に快適であると実感するようになる。
人はやはり、遊んで暮らすのが一番ということだろう。

そんな暮らしが二年も続いたある日、研究機関から手紙が届いた。

もう実験データは十分取れました。あなたは来週いっぱいで、この仕事は首です。

なんてことだ!
もともと、実験がいつまで続くかということは決まっていないといわれていた。

しかし、こんなに唐突に急に首になるなんて!

僕は天国から地獄に突き落とされた。

こんなことなら、こんな実験に参加しなければ良かったとさえ思った。

人間、楽から苦に転ぶほど辛いものはない・・・。
そのことを今更ながらに思い知らされた。

そうして1週間後、研究所員と名乗る一人の男が洋館を訪ねて来た。

「いかがですか、今の心境は?」

男は、街頭アンケートでもするかのように悪びれない口調で僕に質問した。

「最悪ですよ。明日からはまた、どうやって生活しようと悩まなければならないわけですから」

勢いぶっきらぼうにそう答える。

しかし男は、とても満足げにうなずきながら言った。

「そうですか。やはり、そういうものでしょうね・・・」

男はそう言うと、涼し気な目で僕を見つめ、こう付け足した。

「心配はいりませんよ。三日も経てば、あなたは心身共に、すこぶる健康な状態に戻っているはずですから」

僕は男のことを、みえすいた嘘を言う奴だと思い、思いっきり睨み返してやった。


そして三日後、僕あてに研究機関から再び手紙が届いた。

もう一度、実験に参加しませんか?という内容の手紙だった。

しかしこの時の僕は、もう実験に参加するのはごめんだと思うようになっていた。
いつまた突然首になるかも知れない仕事に就くなんて、不安定極まりないからだ。

僕は参加しない旨の返事を出した。

すると数日後、また僕のもとに手紙が届いた。

実験にご協力いただき誠にありがとうございました。
この度の実験により、ストレスのない生活を続けることで、
人は心身ともに正常な状態にリセットされることが明らかになりました。
次回の実験に不参加の意思を示されたことが、何よりもの証です。

貴殿の今後のご活躍を、心よりお祈り致しております

何事もない日々を過ごしてみて、僕は感じた。

非日常の暮らしは所詮、日常ではありえない。

健康的に暮らすという事は、きわめて日常的に暮らすということにほかならないのだと。



白い犬

「あのぉ・・・、アルバイト募集の記事を見たんですけど」
 境内の桜もすっかり葉桜となったある日の昼下がり、制服を着た女子高生が社務所の窓から首を出し声をかけた。
「ああ、巫女さん募集の記事ね・・・」
 そう言って姿を現したのは、社務所の端っこでいねむりをしていたらしい普段着姿の宮司である。宮司はあくびまじりに立ち上がると、入口の鍵を開け女子高生を奥へと案内した。
「はい、ここで待っててね。すぐに面接係が来るから」
 宮司は女子高生を6畳間の和室に通すと、そう言って彼女をその場に残し立ち去ろうとした。
「え?宮司さんが面接なさるんじゃないんですか?」
 女子高生が面食らった声で尋ねる。
「いやあ、実は巫女さんの募集をしたのは僕じゃないんだよ」
 中年の宮司は困ったように頭をかきつつ、和室の襖を開けて奥の座敷にちょこんと座っている白い犬を指差した。
「きみの面接係は、あの犬なんだよ。白っていうんだけどね」
 女子高生は合点のいかない顔で宮司を見上げた。
「犬が面接係ってどういうことですか?」
 やや剣のある口調である。
 そこへ白と呼ばれた犬が近づいて来て、恐る恐る女子高生の匂いを嗅ごうとした。しかしすぐに女子高生が追い払おうとする素振りを見せたので、白は怯えたように奥の座敷へと逃げ戻った。
「うーん。どうやら気に入らなかったみたいだなぁ」
 宮司はそうつぶやくと、女子高生に向かってこう言った。
「残念だけど、ご縁がなかったようだね。白はきみが気に入らなかったみたいだ」
 けれど女子高生は納得がいかないといった表情で、宮司にかみついた。
「巫女を選ぶのに、犬に選ばせるなんておかしいと思います!」
 だが宮司は首を横に振り、申し訳なさそうに言った。
「巫女というのはね。澄んだ心の持ち主にこそ相応しい御役目なんだよ。犬というものは、独自の感覚で不思議と相手の心を読み取るものなんだ。特にあの白は、とても優しい澄んだ心を持っている。『類は友を呼ぶ』っていうだろう?だから僕は、面接係を白にお願いしているんだよ」

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