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ハジ「アトイ、何をしているの? 」

 朝の散歩から帰って来たハジは、部屋の物置の扉を開け、中からシューマの仕事道具を取り出しているアトイを見つけて訊ねました。

アトイ「星読みの準備だよ」

 急な星読みを頼まれて、今朝シューマが隣村に出かけて言ったことを、ハジは思い出しました。

ハジ「そうか、今日はシューマがいないものね。でもアトイはまだ子供だから、星読みを頼む人はいないかも知れないよ」

 最近、にわかに背が伸びてきたとはいえ、まだまだ幼顔のアトイです。

アトイ「そうかもね。でも、もし頼む人がいたら星読みしようと思ってね」

ハジ「一人で星読みできるの? 」

アトイ「星読みのやり方はシューマに教わったから大丈夫だよ。ただ相手の人が僕を信頼してくれないと、正しい答えを導き出すのは難しいんだ。だから頼む人次第だね」

ハジ「ふ~ん。そういうものなの・・・」
 
 この時、開け放たれた家の戸口から聖霊ラフィーが入って来て、ハジに手を上げ合図を送りました。

アトイ「ねえ、ハジ。シューマには内緒なんだけど、僕、市場でとっても綺麗な女の人に声をかけられたことがあるんだ」

ハジ「それで・・・?」

 ラフィーを横目で見ながら、ハジはアトイに相槌をうちました。

アトイ「その女の人がね。僕によく似た人を知っているって言うんだ。それで、生まれはどこかと訊ねられたんだけど、シューマに聞かなきゃ分からないって答えたんだ。そうしたら、その女の人、また僕に会いに来るって言ってたんだ・・・・・・ 」

興味津々の顔で、ラフィーは二人の会話に耳を傾けます。

ハジ「もしかして、それで市場に星読みに行くつもりなの?」

アトイ「もしかしたら、僕の本当のお父さんとお母さんを知っている人かもしれないでしょう?・・・・・・ 」

 これを聞いて、ラフィーが激しく首を振りました。

ハジ「でも、そんな大切な事、シューマに黙っていちゃ駄目だよ! 」

アトイ「・・・・・・」

ハジ「本当のお父さんやお母さんに会いたいって思っていることを、シューマに知られたくないんだね」

アトイ「うん・・・」
 
ハジ「シューマはアトイと僕のお父さんだよ。それは何があっても変わらない。そうでしょう? 」

 アトイが力強く肯きます。

ハジ「だったら話してもいいんじゃない。シューマはアトイの将来のことを考えて、遠いところまで旅に出かけたりするぐらいだもの。アトイにとって良い事だと思えば、頼まなくても本当の親探しをしてくれるかも知れないよ」

アトイ「そうかなあ・・・・・。シューマが悲しんだりしないかな?」

ハジ「いつまでも一緒にいることが、必ずしも本人のためになるとは限らないよ。シューマだって、きっとそう思っているからこそ、アトイを星読みにしようとは考えなかったんだよ」

アトイ「そうだね。今度シューマに話してみようかな、あの女の人に会った事・・・・・」

ハジ「うん。それがいいよ、きっと!」

ハジはそう言って、傍らで二人の会話を聞いていた聖霊ラフィーに目配せをしました。


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白狼ハジ12才。

今日も今日とて、聖霊ラフィーとだべって会話中。

ハジ「ああ、今日も寒いなあ~。君は肉体をもたないから寒さを感じなくて良いね~」

ラフィー「まあね。でも君だって寒さには強い狼じゃないか」

ハジ「強いったって、寒さは感じるさ。人間は勘違いしているみたいだけどね」

ラフィー「アトイもそう思っているのかい?」

ハジ「どうかなぁ・・・。アトイは何にも考えていないだろうね」

ラフィー「・・・・・・?」

ハジ「彼はいつも考え事ばかりしているからね。周りには目がいかないのさ」

ラフィー「ところで、ハジが僕らのことが見えるのはアトイも知っているの?」

ハジ「白狼には神の霊が見えるっていうことは、昔からの言い伝えで知っているよ。ただ、僕もそうだとは思っていないかもね」

ラフィー「どうして?」

ハジ「僕は野生の狼と違って、アトイと一緒に兄弟みたいに里で育ったからさ。神聖なものは、人と隔絶した場所にいるって思い込んでいるんだよ、人間ってね」

ハジ「ラフィーはいつも人間観察しているじゃない。人間が、思い込みの激しい生き物だってことは知っているだろう?」

ラフィー「たしかに。思い込みの激しいところはあるね」

ハジ「どうして人は、神の霊が見えなくなったのだろう?」

ラフィー「人は自信を失ったのさ。神に愛されているという自信をね」

ハジ「アトイもそうなのかなあ・・・」

ラフィー「アトイがどうかしたのかい?」

ハジ「う~ん。最近、元気がないんだ。王になるっていう自信がなくなってきたのかなぁ・・・」

ラフィー「まあ、自信なんて、持てたり、持てなかったりするものみたいだけどね」

ハジ「この分じゃ、僕も、なかなかアトイから離れられそうにないよ」

ラフィー「まあ、もう少し一緒にいたらいいじゃない。 いったん離れたら、もう傍にはいられなくなるんだから」

ハジ「そうだったね。それが掟だものね・・・」

ラフィー「じゃあ、僕はそろそろ行くよ!またね」

ラフィーはそう言って、ハジの前から姿を消しました。

後に一人残されたハジ。

ちょっぴり寂しい気持ちになりながら、アトイの姿を探します。

すると、アトイはいつものように双子岩の上に登り、何やら考え事をしている様子。

普段とかわらぬ光景に、ハジは安心して居眠りをはじめました。


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