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 やがて豪華な食事が食卓に並び、それまで天井下の梁にとまってメリルさんの様子を見下ろしていたイジーがすかさず降りてきた。彼はメリルさんの作るお料理のひとつひとつに舌鼓をうちながらじっと支度が整うのを待っていたのである。ようやく皿にもられた料理がテーブルに運ばれ、メリルさんがいつもの席に着くのを見るや、彼は嬉しそうな声で一声鳴き、彼女の肩の上へと飛び移った。
 するとちょうどそこへ、勝手口の扉の下に設けられた小動物用の小さな出入り口をくぐり抜け、勢いよく食堂に駆けこんで来た者がいた。栗色に輝く長くふさふさとした毛を左右にゆらし、敏捷に走り回る小さな影。レグルスである。
「あら、レグルス!良かったわ。これから朝食にしようと思っていたところよ」
 メリルさんはそう言って、彼女の膝にとびついてきた愛犬を抱き上げた。
 レグルスは急いで走ってきたらしく、すっかり息は上がりぜいぜいとだらしなく垂れた舌からは汗がしたたり落ちている。しかし彼は尻尾を元気よく振り、期待にあふれた大きな瞳でじっとメリルさんを見上げて言った。
「ねえママ。夕方まで出かけて来てもいい?今日、遠くからユノーの友達が訪ねて来るらしいんだけど、友達と僕を面白い場所に連れて行ってくれるって言うの!!」
 メリルさんは、一瞬当惑のいろを浮かべた。
 ファンタジーガーデンの向こうには奥深い森が広がっており、森を熟知している者でなければ、一度足を踏み入れたが最後迷って帰って来れなくなる危険があるのだ。しかしレグルスの楽しげな表情をみると、無下に駄目ともいいきれない。
「ユノーが一緒なら心配いらないとは思うけど、日が暮れる前までには必ず帰ってくるのよ」
 イジーはレグルスの言った「面白い場所」という言葉に持ち前の好奇心がくすぐられる思いがしたが、今はメリルさんの悩みの原因をつきとめる方が彼には重要であった。イジーは黙々と目の前の料理を平らげつつ、頭の中では手紙の差出人を探し出す方法について考えをめぐらし始めた。ところがそうとは知らぬメリルさんは、イジーの気が散るような内容の質問をレグルスにしたのであった。
「ユノーの友達っていうのは、やっぱりもぐらなの?」
 メリルさんはテーブルの上にレグルスのためのお皿を置き、食事をとりわけながら言った。
「それがもぐらじゃないみたいなんだ。僕の知らない生き物だから、会ってからのお楽しみだよってユノーが言ってた!」
 「そう?ユノーがそんな風に言うなんて珍しいわね。彼はあまりもったいぶった言い方をする方じゃないのに。きっととても珍しい生き物なのかも知れないわね」
 メリルさんの言葉に一瞬イジーは口を開きそうになったが、あわてて開きかけたくちばしを閉じ考え込むように左右に小首を傾げた。その様子を見て、レグルスがイジーに話しかけた。
「イジーも一緒に行く?」
 レグルスはイジーが何かに興味を持った時、小首を傾げて考え込む癖があるのを知っていたからである。ところがイジーは意外な反応を示した。彼はまるでレグルスの声が聞こえなかったかのように素知らぬ顔で皿の料理をついばみ続けたのである。やがて皿が空になると、イジーはメリルさんにお礼の言葉を告げるのも早々にテーブルから飛び立った。そしてそのまま、近くの開かれた窓からどこかへと飛び去っていったのである。


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