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 日はすっかり昇り、そろそろ真上にさしかかろうかと思われる時分のことである。
1羽の鳶がゆったりと翼を広げ、舞うように空を飛んでいた。眼下には見渡す限り連なる山脈と、その合間に広がる緑豊かな谷間、そして谷間の中央を流れ、やがては海へとつづく渓流とが横たわっている。鳶は長くこの谷を縄張りにしており、付近に住む動物たちのことは全て見知っていた。ところが、ふと視線のはじに見慣れぬからすの姿をとらえ急ぎ急旋回した。まだ年若いそのからすは、渓流沿いの切り立った崖の突端にある平べったい大岩の上にとまり羽を休めている。鳶は大声でよそ者に声をかけた。ピーヒョロヒョロヒョロという張りのある鳥のさえずりが谷間中にこだまする。からすは驚いて羽をばたつかせ、その場から逃げ去ろうとした。しかし鳶は風のように急降下し、その行く手を遮った。
「どこへ行く若造!」
鳶の鋭い眼光に、からすはすっかり怯えきり恐る恐る答えた。
「僕はファンタジーガーデンに住むイジーという者です」
一瞬鳶は小首を傾げた。
「ファンタジーガーデン?聞いたことがあるな」
鳶は少し考え込むようにうつむいたが、すぐに頭を上げ、思い出したぞ!と叫んだ。
「ファンタジーガーデンというのは、例の<名もなき花>の咲く庭のことだろう?」
鳶がそう言うと、イジーは嬉しそうに何度も大きくうなづいてみせた。
「しかし、ファンタジーガーデンの住人が何故こんな遠い所まで飛んできたのだ?」
鳶がいぶかしむように言うと、イジーはすかさず答えた。
「町へ行く途中なのです」
イジーは、町に住むある人物を探し出し、その人物と自分の恩人であるメリルさんとがどんな関係にあるのかを調べようとしていることを鳶に説明した。
「つまり、町に住むその人物が<名もなき花>の主の悩みの原因ではないかということだな?」
鳶はそう言うと、イジーにここで少し待っていろと命令し、急いでどこかへと飛び去っていった。イジーは焦る気持ちを抑えながらも鳶の帰りを待った。するとしばらくして、鳶は2羽のつがいのからすを連れて戻ってきた。
「このからすたちはこの谷の住人だが、親戚が町に住んでおってな。ときおり町に出かけておるから、町の様子にも詳しい。町に行くのなら是非一緒に行くがいい」
イジーは喜び叫んで言った。
「なんてありがたい!そうして下さればとても助かります。実は、自分一人で探し当てるられるかどうか、とても不安だったんです」
これを聞くと、鳶は満足げにうなづき、つがいのからすは顔を見合わせて笑った。
「<名もなき花>は、この世に二つとない貴重な宝じゃ。ならば、その花を育てているメリルさんも、花同様大切な人ということになる。何しろ、花は彼女にしか咲かせられないのじゃからな!急いで町へ行き、彼女の悩みの原因を調べてきなさい。そして、その悩みを解決するのに我々の力が必要な時にはいつでも声をかけなさい」
鳶はそう言って、イジーの肩をくちばしで軽くつついた。
こうしてイジーは、図らずも心強い道案内を得、鳶に見送られながら町へと飛び立っていったのである。
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