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「両想いになるおまじない?!」
 弘美が眉をつり上げそう叫ぶと、由利恵は片手に持った皿の上の団子を、また一つほおばりながら頷いた。
「ホントにおまじないで両想いになれたの~?ちょっと信じらんないなぁーー」
 弘美はそう言って、なおも疑わしげな目で由利恵を睨む。
「だって本人がそう言ってるんだから、そうなんじゃない?えーっと、確かここに入ってると思うんだけど……」
 由利恵は空になった皿をベンチに置くと、足元の荷物入れのかごの中からリュックサックをひっぱり上げた。
「あったあった!これがそのおまじないの方法だよ」
 袋を開けて取り出した小さなノートをペラペラめくり、由利恵は人差指でページの一箇所を指し示しながら弘美に見せた。一瞬戸惑いの色を浮かべながらも、弘美はノートの中を覗き込む。
「芳枝さん、このおまじないでホントに相沢さんをゲットしたのかなぁーー」
 ため息とも呟きともつかぬ声で弘美がそう言うと、由利恵はあっけらかんとした声で答えた。
「信じる者は救われるってことじゃない?だって芳枝さん、どっちかっていうと引っ込み思案な方じゃない?それがあの相沢さんに自分から近づいたっていうんだから、おまじないで自己暗示でもかけてなきゃ無理だったんじゃないのー」
 「効果あるのかなあーーこのおまじない?」
 弘美は、あいかわらず疑心暗鬼な声でそう呟いた。


ーー週末の高尾山。
 登山というよりは、人を見に来たような混雑ぶりにげんなりした由利恵と弘美は、早々に峠の茶屋のベンチに腰をおろし同僚の噂話に花を咲かせていた。
 それを同じベンチの端で聞くとはなしに聞いていた尼天狗の高尾。二人の話題にのぼっている<おまじないの方法>というのに興味をそそられ、素知らぬ顔で辺りを眺めながらも二人の会話に耳をそばだてた。

(わたし、結構相沢さん好きだったんだよねーー)

 ふと高尾の耳に、弘美の心の中のつぶやきがもれ聞こえた。
 そうとは知らぬ弘美は、何食わぬ顔で由利恵に向かって言った。
「ねえ。そのノートちょっと借りてもいい?」
 怪訝そうな顔で、由利恵が弘美を振り返る。
「ーーいいけど。弘美、おまじない信じないんでしょう?」
 慌てて、弘美は大きく両手を横に振った。
「違う違う!こういうの好きな友達いてさ。絶対知りたがると思うから借りときたいの」
 弘美は作り笑いを浮かべながらそう言って、ノートをたたむとすぐさま肩にかけていたショルダーバックの中にしまいこんだ。
 高尾は、そんな二人の様子を横目でうかがっていた。
 しばらくして二人がベンチから腰をあげ、下山ルートの方へと向かって歩きだす。
 気付かれぬよう少し間をあけて席を立った高尾は、二人の後を追いながらじっと弘美の心の声に耳をすませた。

(このおまじないで、もし相沢さんを振り向かせられたらーー)

 そんな弘美の心の声が聞こえ、「やはりーー」と内心高尾は思った。
「諦めかけた相手でも、他人のものになるのは許せない!人とはほんに妬み深い生き物よーー」
 溜息をついた高尾ではあったが、何となく弘美の行動が気になり後を追ってみることにした。


 
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 幼少期に読んだものは別として、ものごころついてから初めてのお気に入りとなった本が「足ながおじさん」だったとかすかに記憶している。
 気に入った理由は、ずばり物書きを得意とする主人公にパトロンがついて、彼女に夢のような未来をプレゼントしてくれるところ。誰でも、自分の望むことをやりたいようにやらせてくれるお金持ちの人がいたら、ラッキーと思うのではないだろうか?だが大抵の親は、子供が何かに夢中になっていたりすると、「そんな事ばかりしてないで、勉強しなさい!」と説教し、やめさせようとするのがオチーー。
 子供が夢を抱いても、なかなかそれを支持し援助してくれるものではない。そうして大人になるにつれ、自分には足ながおじさんなんて現れはしないのだ、と夢を諦めるようになる。それが現実なんだ、と自分に言い聞かせるようになる。
ーーところがさらに年をとると、今度は周囲に恵まれないと嘆く自分にこそ、実は問題があったのだということにはたと気づく。そうーー親だって子供が本気でやる気になっているなら、いつまでも反対したりはしないものなのだ。親を説得するなら、要は子供の覚悟次第だということ。
 流されるように社会に出れば、気にそまぬ仕事や面倒な人間関係に悩むたび、「こんなはずじゃなかったのにーー」とこぼし続ける羽目にもなる。
 だがそんな自分も、あるとき目が覚める。自分の夢や望みをかなえるチャンスは、自分自身の中にこそ眠っていることに気付くのだ。全く実現不可能なことなら、最初から夢に抱いたりはしないのではないのだろうか?と。どれほどの結果が出せるかは無論分からない。それは、ちっぽけな成果にすぎないかも知れない。でも何かしらの結果はきっと残せるはずーー。
 誰しも人生は1度しかない。自分の人生にとっての幸せな選択とはどんなものなのか?後悔しない人生とは、冒険を避けただ安全な道(生活)を歩むことなのだろうか?自問自答する時間はいつでもあるし、答えを出すのに遅すぎるということもない。
ーー自分を助けてくれる足ながおじさんは、ほかでもない自分自身なのかもしれない。



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