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映画「マシンガン・プリーチャー」を観た。
実話にもとづく物語だが、とても衝撃を受けた。
舞台は南部スーダン。反乱軍に家を焼かれ親を殺された多くの子供たちの姿を目の当たりにして、アメリカ人のサムは孤児院と教会を建てることを決意する。彼は躊躇うことなく私財をなげうって子供たちを支援し、また同士たちと共に銃を取り、反乱軍とも戦う。
スーダンでは今も反乱軍が村々を襲っては殺戮を繰り返し、誘拐した子供たちを拷問、強姦し、また銃を取って戦うことをも強要しているという。こんな非道な状況に対し、サムは現在も子供たちを守るために戦い続けている。
平和な日本にいると、まるで別な世界の物語のようで、なかなか現実味を帯びては感じられない話だ。
けれど、そんな悲惨な状況下にあってさえ、子供たちが懸命に生きようとする姿にはとても心うたれる。
好転する兆しの見えない戦いの日々に疲れ、湧きあがる怒りについに正気を失いかけるサム。
そこへ、弟を人質に取られ、母親を殺すようにと脅されーー殺した過去を持つ少年がサムに声をかける。
「憎しみに心を支配されたら奴らの勝ちだ。心まで奴らに奪われたらいけない!--」と。
どんなひどい状況におかれていても、子供たちは笑顔を持ち続けようとする。
人としての心を、決して悪魔に売り渡しはしない!という彼らの決意。
観ていて、本当に気高く感じられた。
平和の尊さを、改めて感じさせられた映画だった。



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 寒くなってきましたねぇ。
 いよいよ冬本番という感じです。
 そこで私も、テンプレートをクリスマスバージョンに変更してみました。
 表紙つきの小説ブログ向けのものを見つけたので、これまでのものより少しは読みやすくなったのでは?と思っています。
 さて、先日もお話しましたが、ここのところブログの更新回数が減小傾向にあるため、改善対策として4コマ漫画的なファンタジー小説「風見鶏」を連載開始することにしました!
 
 日常のとりとめもないことを、ファンタジックに描けたらーーと思っています。
 みなさまのご意見、ご感想、こんなことを書いてほしい!など、さまざまなコメントをお待ちしております。
 どうぞお気軽にお寄せ下さい。
 彼女の名前は真子(まこ)。
 1歳11ヶ月になる、お転婆ざかりのキャバリア・キングチャールズ・スパニエルである。
 趣味はもっぱら散歩とボール遊びーー何処にでもいる、いたってごく普通のペット犬である。
 だが実は彼女には、ある秘密があった。
 彼女のママは……魔女だったのであるーー

「ママぁ!ねぇ~ママってばぁ!」
 真子は、朝早くからパソコンばかり見ているママにしびれをきらし、うるさく吠えたてた。
「もうずっ~と、パソコンばっかりやってるでしょう!少しは真子とも遊んでよ!」
 すると、いかにも迷惑そうな顔で頭を横に振り、ママが叫んだ。
「うるさいわねぇ!今、魔法で遊び相手を出してあげるから、ちょっと待ってて」
 けれど真子は不機嫌そうに、くぐもった声で「ワゥ~ワゥ」と唸り声を上げる。真子は、ママが魔法で出してくれる動くお人形と遊ぶのが嫌いだったのである。
「お人形じゃ嫌!ママと遊びたいの」
 ママは椅子の周りをくるくる回りながら吠えたてる真子にほとほと閉口し、ついに椅子から重い腰をあげた。それを見るや、真子は大喜びで吠え、尻尾を振りながらママに抱きつく。
「ママ、ボール遊びがいい!」
 彼女はママが遊んでくれるものとばかり思って、勢いよくママの前でくるりと一回転してみせた。遊ぼう!のポーズである。だが大声で叫ぶ真子を尻目に、ママは冷ややかに眉をひそめ、右手の人差し指をくるりと回して呪文を唱えた。
 たちまち、おさげ髪の小さな女の子が現れた。ママが魔法で呼び出した動くお人形である。だが、お人形といっても、見た目は人間の女の子と寸分違わない。女の子は真子の前にかがみこむと、遊びましょうと声をかけた。真子はがっかりして耳をうなだれた。
「そんな情けない顔をするのはやめてちょうだい。真子」
 ママはさすがにしおれた様子の真子を見て気がとがめたのか、そう言って真子の頭を撫でた。
「もうちょっとしたら、遊んであげるからね。他のうちのワンちゃんは、喋っていることを飼い主に分かってもらえないから、相手してもらえない時はじっと静かにケージに入ってるか、お昼寝したりしてるものなのよ。真子は分かってもらえるだけ幸せなんだから、わがままを言っちゃだめよ」
 だがそれは、所詮飼い主の言いぶんというもの。真子が納得するわけもなく、彼女はお人形の女の子がボールを転がし遊びに誘っても、素知らぬ顔をしてふて寝を始めた。
 ママは、やれやれと呟きながらも、またパソコンに向かう。
「魔法が使えても、真子には通用しないわねぇ」
 そうぼやきつつ、しばらくパソコン画面を見つめていたママだったが、じっと自分に視線を注いでいる真子がやはり気になるらしく、一つ溜息をついて立ち上がった。
「真子ちゃん。おやつあげるから、それ食べたらしばらくお昼寝しててちょうだいね」
 これを聞いて、真子は目を輝かせママに駆け寄る。
「まったく……。これだから、真子はちょっぴりおデブになっちゃうのよねぇ」
 するとすかさず、真子はママに言い返した。
「だったら、1日2回お散歩に行ってもいいよ!」
 途端にママが顔をしかめ、ばつの悪そうな声でつぶやく。
「それは、ママが嫌なのよ……」
「じゃあ、真子がおデブさんでもしょうがないね!」
 あっけらかんとした真子の言い分に、ママは諦めたように「そうね」と答えた。
 真子のママは徹底した出不精である。魔法が使えるから家事も自分ではやらない。買い物だって最近はネットショッピングですませている。
 で、何をしているかというと、もっぱらパソコンいじり。
 夜パパが帰ってきてパソコンを使わせてーーと催促しない限りは、日がな一日パソコンデスクに座りっぱなしだ。
 そのくせパパが帰ってくると、パパに「真子ちゃんの相手してやってよね。私は昼間ずっと相手してるんだから」なんて嘘ぶく。
 だけどパパは普通の人だから、真子の言ってる言葉が分からない。ママの言う通りだなって、すまなさそうな顔をして真子の相手をしてくれる。真子はいつもそんなママをずるい!と思っていた。
(真子にも魔法が使えたら、パパがわたしの言葉が分かるように呪文を唱えるのに)
と彼女はいつもそう思うのだった。

            キャバリア ブログ HOD

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「ギルバート!ーーまだ脈があるぞ」
 地面にうつ伏せに倒れているクリス老人の腕を取り、脈の有無を確認していたチャールズが大声で叫んだ。
 ギルバート氏は、険しい表情のまま頷いた。クリス老人は転落の際後頭部に傷を負ったらしく、地面にはかなりの出血が広がっていた。意識も失っており、いまだ予断を許さぬ状態であることは明白である。
「分かった!すぐに医者を呼ぼう」
ギルバートはそう答えると、傍らで硬直したように立ちつくしているメアリーに目を走らせた。
 彼女はクリス老人の血の気の失せた顔を凝視したまま、すっかり正気を失っているように見受けられる。彼はメアリーのそばに歩み寄ると、彼女の肩に手をおき、「後は僕たちに任せて、君はデービッドの傍にいてやってくれ」と囁いた。メアリーはギルバートの口からデービッドの名前を聞くと、やっと我に返ったように周囲を見回してつぶやいた。
「デービッドは?……」
 呆然とした表情ではあったが、メアリーの口からは、はっきりと息子の名前がもれた。
 クリス老人が転落したとき、メアリーは不運にもそのすぐ真下に立っていた。
 偶然窓からチャールズの姿を見かけたメアリーは、居ても立ってもいられず、その後すぐに部屋を抜け出し庭へと降りて来ていたのであった。ところが、彼女が駆けつけたときには、すでにチャールズの姿はそこにはなかった。
 そして皮肉にも、かわりに彼女の目に飛び込んできたのは、恐怖を感じるほどの夥しい数のカラスの群れだったのである。怯えた彼女はすぐに屋敷に取って返し、使用人を呼んでカラスを追い払わせようとした。ところが階上からその様子を見ていたクリス老人は、慌ててそれを阻止しようと大声を張り上げたのだった。のみならず、彼は勢い窓から大きく身を乗り出そうとし、その拍子に誤って転落してしまったのである。
 何という悲劇だろう!そのときデービッドは、クリス老人のすぐ隣に立ち、それを目の当たりにしていたのである。
「何てことでしょう!デービッドは……あの子は、大好きなクリスが窓から落ちていく姿を見ていたに違いないわ!」
 メアリーはしゃくりあげるような涙声になり、そう叫んだ。
 老人は「カラスを追い払ってはいかん!」と叫びながら、運悪く転落事故に合ってしまった。横にいたデービッドは、その一部始終をずっと見ていたのである。カラスを追い払わせようとしたがために、クリスに悲劇が訪れ、それを命じたのは、他ならぬ彼の母だったのである。メアリーの心は張り裂けんばかりの悲しみにうちひしがれた。
「おお!どうしましょう。あの子は私を決して許さないわ」
 この様子を見ていたチャールズは、メアリーの肩を抱いて、しっかりしなさいと声をかけた。
「君が気弱になってどうする?!デービッドは賢明な少年だ。何も気に病むことはないさ」
 メアリーは目を伏せたまま、小さく頷いた。
 しかしチャールズは、ふいに人の気配を感じて目を上げ、思わず息をのんだ。
 いつの間に来ていたのか?彼らのすぐ目の前にデービッドが立ちつくし、地面に倒れているクリス老人の方をじっと見つめていたのである。
「デービッド?!」
 チャールズの目に映ったのは、デービッドのーーおよそ別人のようにも思える怒りに満ちた表情であった。
「クリス……。クリス!クリス!」
 少年は二人には目もくれず、哀れにも地面に身を横たえている老人のもとへと駆け寄って叫んだ。
「駄目だよ、クリス。クリス!死んじゃ駄目だ!」



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 ママは3週間に1度、真子をペットサロンへと連れて行く。
そして、今日がまさにその日だーー
 ママは真子にそうは言っていなかったが、彼女は薄々それに勘付いていた。というのは、昨日ママがペットサロンのお姉さんと電話で話をしているのを聞いていたからである。ママがペットサロンに電話するときは、大抵次の日には予約を取っていることが多い。
 そして、普段は散歩嫌いのママも、この日だけは駅向こうにある行きつけのペットサロンまで、わざわざ足を運んでくれるのだ。 ただサロンに行く前、ママは決まって真子が嫌がるあることを始めるので、それにはいつも辟易していた。それはーー、ブラッシングである。
「真子ちゃん。今日はペットサロンに行く日だから、ちゃんとブラッシングしておきましょうね」
 外出用の服に着替えるママを見て、いよいよ出かける!と察知した真子は、慌てて部屋の隅へと駆け込み身を隠した。しかし着替えを終えると、ママはワンちゃん用のブラシを手に取り、睨むように注意深く部屋を見渡す。たとえ少々真子がじょうずに姿を隠していたところで、ママがちょちょいと魔法をかければ、あっという間に彼女は見つかってしまう。
 それでも真子が、抱き上げようとするママの手からすり抜け逃げだそうとすると、今度は体がまるで動かなくなる魔法をかけられてしまう。
「これからサロンで綺麗にしてもらうのに、どうしてブラッシングしてから行かなきゃならないの?」
 ブラッシングされるのが嫌いな真子は、耳の後ろや尻尾の先まで、執拗にブラシをかけようとするママに向かい不満そうな声を出した。
「シャンプーする前にブラッシングして毛玉をとっておかないと、カットするときに、たくさん毛を切られちゃったりするのよ。真子そうなったら嫌でしょう?」
 脅すようにそう言われると、真子は首をうなだれ、たちまち神妙な顔になった。
 真子はできるなら、自慢の長毛を切られたくはないのだ。だが、キャバリアは小柄なわりに体毛が伸びるので、どうしても定期的にカットせざるを得ない。そうしないと、散歩のときに尻尾を垂らして歩く癖のある真子は、地面のほこりやら枯葉やらをすぐに尻尾にくっつけてママに叱られるのだ。
「真子ったら。どうして、もっと尻尾を上げて歩けないのかしら?」
 お散歩していると、いつもママはそうやってぼやく。でも、真子は尻尾を上げて歩くほど外の世界に慣れてはいないのだ。真子にとって、外の世界はおっかないものだらけなのだから。
 特に怖いのが、近所の男子校に通う学生たちが道幅いっぱいに並んで歩いて来る時だ。
 真子は以前、散歩コースにある川の畔で、ひなたぼっこをしている鴨に棒を振るい、追いかけまわしている男子学生を見たことがある。
 この時はママが、鴨をいじめていた学生の足元に魔法で石を出して転ばせた。それで、鴨は飛び去り難を逃れたのであったが。
 だがそれ以来、真子は男子学生が近くを通るたび、尻尾を丸めてママの後ろへと身を隠すようになったのである。
 とはいえ、もちろん散歩には楽しいこともいっぱいある。犬好きな人に遭遇すれば、真子の姿に目を細め、「可愛いわねぇ」と優しく声をかけてくれるし、時にはワンちゃん連れの人に合い、親しくなることもある。
 そして、今日もそんな偶然に真子は出くわした。
 それは、ペットサロンに行った帰りであった。
 大きなスーパーの前をママと歩いていた真子は、自分よりも一回り小さな白と茶のぶちのワンコが、こちらに向かって歩いて来るのに気付いた。するとママも気付いて真子に話しかけた。
「真子ちゃん。あそこにいるのは、ジャックラッセルテリアっていう種類のワンちゃんよ」
 ママがそう言って間もなく、ジャックラッセルテリアは真子のすぐ近くまでやって来た。
 たちまち、真子がママの後ろに隠れる。
「真子ちゃん。隠れてないでご挨拶しなさい」
 ママは何度もそう声をかけたが、真子は頑として隠れたまま動かない。
 やがてワンちゃん連れが行き過ぎると、ママは呆れたように呟いた。
「真子って、どうしてこう怖がりなのかしら?」
 だが真子は、そんなママの呟きを聞きながら、内心(分かってないなぁ)と思う。
(ママったら、鈍感ね。さっきのは男の子だったでしょ。初対面なのにこっちから近づくなんて、はしたないじゃない!男の子には、最初はその気がないように振る舞うのが女の子として当然よ!)
 しかし真子はーー心ではそう思いながらも、ついついさっきのワンちゃんの方を振り返ってしまうのだった。


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悲しみにくれるデービッドにチャールズは言葉を失い、メアリーは泣き崩れてその場に座りこんだ。
懸命に呼び掛けるデービッドの声も空しく、クリス老人はぐったりとその身を横たえ指先一つ動く気配はない。絶望に駆られるデービッド。彼の頬を幾筋もの大粒の涙がこぼれ落ちる。
 そんななか一羽のカラスが、矢のように早くデービッドたちのところへ滑空してきたかと思うと、うつ伏せになっている老人の背中へひょいと飛びおりた。そうしてピョンピョンと跳びはねるように老人の上着のポケットへと近づくと、大きなくちばしを中に突っこみ探り始めた。デービッドが何事かと目を上げると、カラスはさも嬉しそうにカーと声を上げて鳴き、ポケットの中から丸まった白いハンカチを引っ張り出した。それを見た瞬間、デービッドも手を叩いて叫んだ。
「そうか、イジー!名もなき花の球根だね」
 少年の言葉に答えるようにカラスのイジーは大きくうなずき、くちばしにくわえていたハンカチの包みをポトリと彼の膝の上に落とした。
 デービッドはすぐにそれを拾い上げ、大事そうに両手で包み込んだ。
「これがあれば、クリスを助けることができるかも知れない……」
 デービッドの声はかすかに震えていたが、もはやその声色には先ほどまでの絶望的な響きはなく、かわりに確かな希望の光が差し始めていた。
 カラスのイジーは、デービッドが「名もなき花」をそっとクリス老人の鼻先へと運ぶのを見届けると、ふたたび舞い上がり、カラスの群れの中心にある木の枝へと飛び移った。そして彼は、仲間のカラスたちに向かい熱のこもった口調で語り始めた。
「クリスさんは、今とても危険な状態です。このまま放っておいたら、死んでしまうかもしれません。みなさんの中で、誰かメリルさんのところへ行き、このことを伝えて来て下さる方はいませんか?クリスさんは僕の命の恩人なんです。それにメリルさんにとっても、「名もなき花」の球根を譲り渡したほどの大切な友人なんです。ですから何としても、クリスさんを助けたいのです。どなたか行って下さる方はいませんか?」
 すると、例のつがいのカラスも、大声で群れに向かって叫んだ。
「私たちはここまで旅して来たため、もうあまり飛ぶ力が残っていません。十分飛ぶ力があり、またより早く飛ぶ自信のある方が、メリルさんのところへ行き呼んできて下されば、クリス老人を助けることができるかも知れません!」
 これを聞くと、カラスたちは互いに顔を見合わせ、口々に言い合いを始めた。そうして収集のつかないような騒ぎにまで発展してしまったとイジーが困り果てていると、突然一羽のカラスが雷のような大声で群れを一喝して言った。
「お前らは引っこんでいろ!誰よりも早く飛べる者というのなら、俺をおいて他にはいるまい!」
 怒鳴り声の大きさに驚いたカラスたちが、いっせいに静まりかえり声のした方に目をやると、そこには、見るからにいかつい風貌の体のがっしりとした大ガラスが、威嚇するようにくちばしを大きく開き、カラスたちを傲然と睨み返していた。
「早く飛ぶことなら、俺にかなう者はいまい。俺がメリル婦人のところへ行ってやろう!」
 これを聞いたつがいのカラスは、すぐにイジーに耳打ちした。
「あれは、この街では知らぬ者はいない乱暴者だが、飛ぶことにかけてはまず奴の右に出る者がいないのは確かだ。ここはひとつ、彼に行ってもらうことにしよう!」
 イジーは、乱暴者と聞いてやや尻ごみしたが、勇気をふりしぼって大ガラスのもとへ飛んでいくと、ファンタジーガーデンまでの道筋を詳しく説明した。さらに途中谷で出会った鳶のことも彼に伝え、谷からは鳶に道案内してもらうといいと伝えた。大ガラスは、承知した、と答えるが早いか、これまでイジーが見たこともないような力強い羽ばたきで空へと舞いあがった。そうして見る見るうちに街の彼方へと飛び去って行ったのである。
 
 こうして使いのカラスがファンタジーガーデンへと飛び発ったのを見届けたイジーは、クリス老人の容体を案じ、ふたたびデービッドとクリス老人のもとへと戻った。心配げにクリス老人の顔を覗き込むが、老人の意識はまだ戻ってはいない。デービッドは掌に乗せた「名もなき花」をクリス老人の鼻先へと近づけたまま、何事かを念じる様子でじっと目を閉じていた。イジーはデービッドの傍らに身を寄せ彼とともに一心に願った。
(どうか、クリスさんが元気になりますように!)
と、その時、かすかにクリス老人の右手の指先が動くのに気付きイジーが叫んだ!
 イジーの声にデービッドも目を開けると、ようやく意識を取り戻したクリス老人が、弱々しい声でつぶやいた。
「デービッド様ーー」
 デービッドは嬉しそうに叫んだ。
「クリス!気がついたの?」
 その声を聞きつけ、チャールズも慌てて二人のもとへと駆け寄った。
「デービッド様……。<名もなき花>をお使いになったのですか?」
 苦しい息の間から、クリス老人はそう囁いてデービッドの顔を見上げた。
「うん……でも、僕の力じゃ足りないよ。クリスを助けるにはメリル婦人の力が必要だ!」
 デービッドは悲しげな声でうめくように言った。
 しかしクリス老人は穏やかな口調で言った。
「デービッド様は、じゅうぶん助けて下さいました。私はもう痛みを感じません。恐らく「名もなき花」が私の痛みを取り除いてくれたのでしょう。これもデービッド様が、私の傷の回復を強く願って下さったおかげです」
 チャールズは二人の会話にじっと耳を傾けていた。
(「名もなき花」は用いる者と、癒される者との心によって、治癒力に大きな差が生じるのですーー)
 と、メリルさんから聞かされていた彼は、クリス老人の出血が止まり、傷跡が塞ぎ始めているのに気付き驚嘆せずにはいられなかった。しかし、老人の容体は決して芳しくはない。むやみに体を動かすことも躊躇われるような状況には違いなかった。


 そうしてその場でクリス老人の様子をうかがいつつ、医者を呼びに行ったギルバートの帰りを今か今かと待ち続けていた彼らだったが、やがて屋敷の表でばたばたともの音がし、人の叫ぶ声がしたたかと思うと、裏庭へと通じる脇道を駆けてこちらにやって来る二人の人影を見出し、みな一様に喜びの声を上げた。
 それは紛れもなくギルバートと、彼が連れてきた医者と思われる紳士に違いなかった。
「ギルバート!」
 チャールズはそう叫んで、彼らの方へと走り寄った。
「クリス老人の様子はどうだい?」
 息をはずませながら問いかけるギルバートと医者に向かい、チャールズは意識が戻ったことと、傷の出血が収まったことを話した。すると医者は、出血が止まったですって!と驚きの声を上げ、地面に横たわっている患者のもとにかがみこみ傷跡に目を走らせた。
「信じられんことだ!止血もしていないというのに、出血が止まるとは」
 医者はわが目を疑うといった様子で、唸り声をあげつつもクリス老人の診察を始めた。

 TSUTAYA 月間レンタルランキング1位に、「SPEC ~天~」が輝いている。
 この作品は特殊能力(スペック)を持った犯罪者に立ち向かう、未詳事件特別対策係(ミショウ)捜査官の活躍を描くストーリー。スペックホルダーでもあり、ミショウの捜査官でもある当麻紗綾(戸田恵梨香)と瀬文(加藤亮)が両主演の物語だ。
私はドラマを視ずに劇場版を観賞したのだが、物語の筋に興味を抱き、観たあとに物語の背景を調べてみた。
 すると非常に設定が巧みであることが分かり、よりいっそう面白い作品だなぁと思えた。
 なので、まだドラマを視ていないという方には、予め物語の背景について少し調べてからご覧になることを、是非お勧めしたい。ちなみに「スペック~翔~」は角川文庫からノベライズされているので、活字でさくっと読むということも可能だ。
 ドラマを視ていた人には、劇場版オリジナルの登場人物「伊藤淳史」などがドラマのイメージを壊していると感じた人もいるようだが(TSUTAYAのレビューより)、確かにちょっと人間離れしすぎていた観はあったかな?
いくらスペックホルダーとはいっても、限度はあるよね。。。
 ただマダム陽との対戦など、スペックホルダーとの戦闘シーンなど映画の見せ場はじゅうぶん楽しめた。

 それにしても、この作品は謎が多い。そこが魅力ともいえるのだろうが。
 まず、「御前会議」と呼ばれる謎の集団と、彼らの話題にのぼる「シンプルプラン」の中身。次にヴァチカンのローマ法王が秘蔵しているといわれる「ファティマ第3の予言」の内容。そして、ソロモンの鍵。(ソロモン王は神に「知恵」を求めてソロモンの鍵=レメゲトン<魔術書・魔導書>を得、72柱といわれる天使・悪魔・精霊などを使役して巨万の富を得たといわれている)
 調べたところによると、シンプルプランについては、
 「5つのパーツに分けるとはレメゲトンそのものだ」と御前会議での発言があったーーとか、
「劇場版 SPEC~翔~」のラストで、ミショウの野々村係長が、「ひとまずゴエティアのパーツは確保できたか?」という発言をしているが、「レメゲトン」の第一部がゴエティアだと言われているらしい、というようなことが分かってきた。
 とすると、スペックホルダーはソロモン王が手に入れたという、72柱のような存在ということか?
 これは今後明かされていく謎だろうとは思うが、なかなか設定が凝っていて、ファンタジー好きな私としては興味をそそられる。
 今後の展開が楽しみな作品だ。



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 壁際の椅子に腰かけていたメアリーは、思いがけず息子に話しかけられ逡巡としたが、すぐに居住まいを正し、つとめて平静を装おうとした。
 だが、いつもなら息子の呼びかけには母親らしい情愛に満ちた表情を浮かべる彼女が、緊張を隠そうとするあまりに無表情をとりつくろうさまは、いかにも不自然なものだったと言わざるをえない。
「どうしたの?デービッド」
 かすれるような声で答えて、メアリーは頬に垂れかかるほつれ髪を右手でかき上げた。伏し目がちに息子の眼差しをやり過ごし、顔を背けるようにクリス老人の方へと視線を落とす。
「クリスは、昏睡状態のようね……」
 しかし抑揚のないメアリーの声は、かえってデービッドの心を逆撫でせずにはいられなかった。彼は一瞬、膝の上で拳を握りしめた。やり場のない腹立たしさを母にぶつけたくなる衝動をじっとこらえ、感情を押し殺した低い声で言った。
「この部屋を、僕とクリスの二人だけにしてくれないかな。それと、いったん部屋を出たら、僕がいいと言うまで誰も中には入らないで欲しいんだ」
 クリスを担ぎこんだ部屋は客間の一つであったが、普段はほとんど使用されることはなかった。そのため人の出入りを禁じたところで、特に不都合はないと思われた。
 ただメアリーは、デービッドが他の人間を部屋に寄せ付けないようにしようとすることに、やや抵抗を感じて言った。
「クリスと二人だけになりたいというのは構わないけれど。でも……他の人を全く部屋に入れないというのはどうかしら?お医者様には、クリスの容体を診ていただいた方がよいでしょうしーー」
 メアリーはそこまで言いかけて、デービッドの燃えるような眼が自分に向けられていることに気づき、慌てて口をつぐんだ。
「僕の言うとおりにして!母さん」
 吐き捨てるような口調に、周囲の人々の視線がいっせいにデービッドに注がれる。
 メアリーは、自分を威圧するようなデービッドの態度にひどく衝撃を受け、悲しみと怒りから彼女の唇からはたちまち血の気が失せていった。
 これを見たチャールズは、「デービッドの好きにさせてあげた方がいい」とメアリーに囁き、ギルバートも、駆けつけてきたメイド頭のセシリアに、「奥様を、部屋までお連れしてくれ!」と急ぎいいつけた。
 二人は、やや神経質な面のあるメアリーが、激しく動揺し感情的になることを恐れたのである。
 デービッドは、皆がものいいたげな顔で自分を見つめているのを感じていたが、唇を噛みしめたまま彼らを静かな目で見返し、「みなさん、部屋から出ていただけますか」と言ったきりその場に立ちつくした。思いつめた彼の様子に、やむを得ず一人また一人と部屋を出て行き、最後にギルバートが「部屋には、誰も近づかせないようにしましょう」と告げて出ていくと、デービッドはすぐに扉をばたんと閉め内側から鍵をかけた。
「さあ!イジー。これで部屋には僕らだけだよ。窓を開けて君の仲間を呼ぼう!」
 振り返りざまデービッドはそう言うと、庭に面した四つの窓に小走りに近づき、順にそれらを開け放しにかかった。
 全ての窓が開かれるのを見届けると、イジーは大声を上げて仲間のカラスたちに呼びかけた。
 その途端、バタバタバタと凄まじいカラスの羽ばたきが辺りに響き渡ったかと思うと、真っ黒なカラスの渦が空を覆った。渦はぐるぐると旋回しながら、しだいに八の字を描くように飛び方を変化させていく。
 そうして波打つように飛び続けながら、徐々にまた形を変えていくと、今度はパッと四方に飛び散り、それぞれが真っ直ぐにクリス老人のいる部屋の窓へと飛び込んで来たのだった。
 だが彼らはその数の多さにもかかわらず、実に巧みに飛行してみせた。狭い部屋の中に入っても、仲間同士がぶつからぬよう、輪を描きながらぐるぐると部屋の中を器用に飛び回る。さらにタイミングを見計らっては、一羽ずつ順番に床や照明、机の上など部屋のいたるところに次々ととまっていく。
 そしてほんの数分ののちには、彼らはクリス老人とその傍に寄り添うデービッドを囲むように集い、あっという間に部屋はカラスの大群に埋め尽くされたのであった。


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