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「自然界の掟って厳しいわよねぇ・・・」
 夕べ録画しておいたテレビの番組を見ながら、ママは一人つぶやいた。
 真子は、アフリカのサバンナで繰り広げられる弱肉強食の映像に見入っているママを、ちらりと横目で一瞥した。テレビから聞こえてくる猛獣の恐ろしげな唸り声。反射的に画面に視線を走らせた真子の目に、運悪くアップになったライオンの映像がとびこんだ。真子は顔をひきつらせ、慌てて顔を背ける。
 パソコンデスクに座っているママをうらめしげに見上げてみるが、画面に釘付けのママは気がつく気配がない。真子は諦めてソファにうずくまり目を閉じた。肉食獣に襲われる残酷な映像なんて、真子には怖くて見ていられない・・・
「真子ちゃん。自然界っていうのはね、本当はこんなに厳しい世界なのよ!」
 けれどもママはそんな真子の気持ちに気づかないのか、当然のような口ぶりで画面から目を背けている真子に話しかける。そのうえじっくり番組を最後まで見るつもりらしく、飲みかけのコーヒーとクッキーの入った小皿をパソコンデスクからソファ脇のテーブルに移して、深々と腰をおろした。テレビの真向かいに置かれたこのソファが、テレビを見るのに好都合だったからである。
 真子はリビングの中で、このソファが一番のお気に入りの場所だった。だがときおり、ママやパパが真子の興味のないテレビを見ているときなどは、ひどく居心地悪く感じられることがある。
 今がまさにそうだ。
(ママ、こんな番組を見るのはやめて!)
 心のなかではそう叫んでいる真子だったが、それを口にすることはできなかった。なぜって、ママがとても真剣な顔で番組を見ているからである。
 真子のママは、テレビを見るのがお仕事らしい。「放送作家」という職業なのだそうだ。番組を見ることはママの大切なお仕事。だから、真子の見たくない番組をママが見ていることがあっても、お仕事なんだから仕方ないーと真子は我慢することにしていた。
 でも今日の番組にはさすがに真子も辛抱できず、とうとう彼女はソファを降りた。そしてとぼとぼと部屋の隅っこまで歩いて行き、大きなため息をついて床に寝そべった。
 しかし10分程も経った頃だろうか。急にママがテレビのスイッチを切ってソファから立ち上がり、食器を鳴らしながら台所へと運んで行く足音がした。
 真子は構わず、目を閉じたまま床に足を伸ばして寝ていたが、ふと気が付くと、すぐ目の前にママが立っていて、こちらを見下ろしていた。

「真子ちゃん。ママのところに来てくれてありがとうね」
 ママはかがみこむと、真子の頭を撫でながら唐突にそう言った。
「どうしたのママ?」
 真子がきょとんとしてママに訊ねる。
 するとママは、さっき番組を見ていた時と同じ真剣な眼差しでこう言った。
「真子ちゃんが、あんな怖い思いをしなくて良かった。辛く寂しい思いをしなくて良かった。ママのところに来てくれて本当に良かったって、心からそう思うからよー」

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