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「真子ちゃん、何か音楽でもかけようか?」
 ー窓の外は雨。
 起きがけに、部屋のカーテンを開けに立ったママの後ろにくっついて外を眺めようとした真子は、降りしきる雨に濡れそぼった庭の草花を見て、「なんだぁ・・・」とがっかりした声を出した。そんな様子を眺めながら、ママが再び声をかける。
「何が良いかしら・・・。ケルティック・ウーマンなんてどう?」
 本棚の一角に並べてあるCDのうち1枚を選び出し、ママが訊ねた。
 ケルティック・ウーマンは、真子がドライブに連れて行ってもらう時、好んでママがかける曲である。真子はドライブが大好きなのだが、どういうわけか車が発車した直後は、気分が高まりすぎて辺り構わず吠え立ててしまう。そんな真子を落ち着かせるのに格好なのが、静かで美しいメロディラインの彼女たちの曲なのである。
 真子は黙ってケージに戻ると、中央に置かれた自分のベッドに入りうずくまった。
 ママが曲をかけ始める。
 室内に、女性ボーカルの優しい声が響き渡った。
 胸にしみいるような音楽に、真子がうっとりとして目を閉じる。
(綺麗な声・・・)
 真子は、しだいに気持ちが安らいでいくのを感じた。
 ママはパソコンデスクに向かい、キーボードを叩きはじめた。
 仕事に行き詰った時、気分転換に音楽をかけたりすると、気分が軽くなって仕事がはかどることがあるのよー。以前ママは、真子にそんな事を言っていた。ちなみに、ママと真子は音楽の趣味が合う。そうそう、パパもね?(パパが、話を合わせてるのでなきゃだけど・・・)
 真子は曲を聞くうち、1週間ほど前にパパとママと連れ立ってドライブに行った時のことを思い出した。その日はとても良い天気だったので、パパが「いつもの散歩じゃなくて、みんなでドライブに行こう!」と、ママも誘って連れ出してくれたのである。
 目的地は車で20分ほどのところにある森林公園。ここはとても手入れの行き届いた公園で、短く刈り込まれた芝生広場のほか、湿地に生える植物などが観察できるこんもりとした森もある。
 涼しい風の吹く木陰の道を歩きながら、ふと真子はある光景を怪訝に思った。公園内にある池で、たくさんの人が夢中になって何かを釣っているのだ。池の中をのぞいて見るが、水が濁っているせいか魚の姿は見えない。やがてしばらく歩くうち、公園内の立て看板に「ザリガニが増えて困っています!」と書かれているのをママが見つけ、真子に教えてくれた。
「ザリガニが増えすぎて困るので、釣って欲しいって書かれているわ」
 ザリガニというのは、もともとこの池にはいなかったカニらしい。でも、ある日どこからかやって来て公園の人が困るほど増えたのだそうだ。「外来種っていってね。本来ならこの辺にはいるはずのない生き物だから、みんなで協力して捕まえているのよ」ママはそう言って真子に説明してくれた。

 この激しい雨の中、水量が増した池のザリガニたちは今頃どうしているだろう?揃って大きなはさみをカチャカチャ鳴らしながら、池の中から這い出て、公園のあちらこちらを歩いていたりするのかしら?
 そんな想像を巡らすうち、真子はなんとなく気味が悪くなってきた。
 やがて堪らなくなってきた真子は、すっくとベッドから立ち上がり、ケージから出てママの足元まで行き横になった。
(やっぱり、ママの近くが一番安心・・・)


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