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ふと後ろでもの音がして、うとうとしていたレグルスは咄嗟に飛び起き身構えた。
ぐるると低い唸り声を上げ、素早く後ろを振り向く。が、彼の目に映ったのは、ぎこちない笑顔で片手を挙げ立っているユノーの姿であった。
「ユノー?!」
 レグルスは気の抜けたような声を上げ、笑っているユノーを恨めし気に見つめた。
「もう、友達とは会えたの?」
 レグルスが訊ねると、ユノーは後ろを振り返り、スミスが身を潜めている茂みを指差して言った。
「あそこの茂みにいるよ。恥ずかしがり屋だから、いつも人目につかない所に姿を隠す癖があるんだ」
 そう言って湖の周囲をゆっくりと見回すユノーに、レグルスはずっと気になっていたことを訊ねた。
「今日、神秘の谷へは行けるかしら?」
 するとユノーは少しの間考えこんでいたが、「うん、たぶん行けるだろう・・・」と答えた。
 たちまち、レグルスは嬉しくて飛び跳ねたい気分になった。尻尾を大きく左右に振って、確かめるようにユノーに問いかける。
「神秘の谷って結構遠くにあるんでしょう?今から行って、夕食の時間までに家に帰れるかなぁ」
 ユノーはそんなレグルスを黙って見つめていたが、やがて「レグルス・・・君にやってもらいたいことがあるんだ。もしそれをやってくれたら、神秘の谷へ行っても必ず夕方までにはここに帰って来られるはずだよ」と話を切り出した。
「僕にやってもらいたいこと?それって一体どんなこと?」
 レグルスがやや不安そうな声で訊ねると、ユノーは「簡単なことだよ。ただ、これは友人のスミスと一緒にやってもらうことになる。だから、スミスに慣れてもらわないと困るんだ・・・」と言って、さきほどの茂みの方を振り返った。しかし、レグルスはますます不安げな声になり、つぶやくように言った。
「ねえ、ユノー。僕さっき天使のラルフに言われたんだ。君の友達に会うと・・・その、怖い目に合うってね」
 一瞬、ユノーは強張った表情で俯いたが、やがて静かな声で言った。
「わたしは、君を傷つけるようなことは決してしないよ、レグルス。ただ、これだけは知っておいてもらいたいんだ。冒険をしようと望むなら、勇気が必要だということをね!」
 レグルスはユノーを見つめ返し、詫びるように言った。
「ごめんなさい、ユノー。君を疑うようなことを言って。僕やってみるよ!だから、君の友人スミスに僕を紹介してくれるかな?」
 これを聞くと、ユノーはほっとした様子で答えた。
「もちろんさ。さあ、みんなで神秘の谷に行くぞ!」
 ユノーの弾むような声に、レグルスもつい嬉しくなり尻尾を高く掲げて笑った。


     ********


 レグルスはユノーの指図通り、両目を閉じて湖の方を向いて立っていた。
「いいかい、このままじっと耳を澄まして待っているんだ。すると岸に向かって近づいてくる音、水面の波立つ音が聞こえてくるはずだ。君は耳がいい。だから音で、すぐ近くまで来たことが分かったら目を開けろ。そうして湖から飛び出してくるものにしっかり飛びつくんだ。いいね、決して恐れてはいけない!必ずしがみついて、決して離れないこと」
 ユノーはそう言ってレグルスを湖岸に立たせ、自分はスミスを待たせているからと言って、茂みの中へ入って行ったのだった。湖から飛び出てくるものが何なのかは、ユノーは教えてくれなかった。黙っているところをみると、きっと勇気をふり絞らなければつかむことができないものなのだろう。
 なんとも心細い気持ちになるが、湖から出てくるものをつかむとき、友人のスミスも手伝ってくれるらしかった。
 ユノーは、「スミスはとても温厚なやつだよ。でも外見は少し怖いように見えるかも知れない。だからといって、彼を恐れてはいけないよ。そして協力して、湖から出てくるものをしっかりつかむんだ!」と言って、レグルスの肩を軽く叩いた。
「大丈夫だよ。僕を信じて任せてくれれば、きっとうまくいく!」
 しばらくして、レグルスの耳に湖面がわずかにざわめく音が聞こえてきた。
 まだ、湖岸までは少し遠い。だが、確実に少しずつ・・・少しずつこちらに近づいてくる。もうじきだ。音はもう、すぐ近くまで来ている!
次の瞬間、レグルスは大きく目を見開いた。
すると彼のすぐ脇に、見たこともない巨大な灰色の獣が立ち上がり、湖から飛び出て来ようとする獲物を待ち受けているのが見えた。そのあまりに恐ろしい顔に、レグルスは全身が総毛立つのを覚えた。


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