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昨日から、ママは実家にご用があって里帰り。
ということで、パパが会社に出かけて留守の間、久しぶりに明お兄ちゃんが真子の面倒を見に来てくれることになった。真子は大喜びである。

「ねえ、明お兄ちゃん。真子にも魔法って使えないのかな?」
 リビングでボール遊びに興じていた真子は、急にくわえていたボールを放し、唐突にお兄ちゃんに訊ねた。駄目は承知のお願い・・・でも試しに、どうしても真子は訊いてみたかったのである。するとお兄ちゃんは真子の顔を穴が開くほどじっと見つめていたが、しまいにポツリとこう言った。
「無理ということもないだろうよ」
 意外な返事に、真子が勢いづいて訊き返す。
「じゃあ、真子も練習すれば魔法を使えるようになるの?」
「ああ、使えるようになるよ」
 お兄ちゃんはさらりとした顔で返事すると、背筋をのばし、椅子の背もたれに深く座りなおした。
「どうしたらいいの?」
 真子は興味津々でお兄ちゃんの顔を凝視する。
「ママも僕も、以前は魔法なんて使えなかったんだよ。だけど、ある人に魔法の使い方を教わって、それで使えるようになったんだ」
「へえ・・・、そうなの?」
 真子が立ち上がって前足を自分の足にかけるのを見て、お兄ちゃんは真子を抱き上げ膝の上に乗せて言った。
「でもね、大切なのは何故魔法を使いたいのか?ってことなんだ。僕らに魔法を教えてくれた人は、その理由がとても大切だって言っていた。真子ちゃんは、どうして魔法を使えるようになりたいなぁって思ったの?」
 真子は返事に迷った。魔法を使いたい理由って言われても、特別な理由があるわけではない。ただママが指をくるくるっと回して呪文を唱えると、いろんな事ができるのを見て、とても羨ましく思っていたからなのだ。でもそんな理由を言ったら、きっと魔法の使い方を教えてくれたりはしないだろう。真子はそう思い、しゅんとして俯いた。
「真子ちゃん。僕は叱ってるわけじゃないんだよ。ただ、魔法ってね。使う人によって、良い魔法にも悪い魔法にもなるんだ。だから、使う時はよく考えて使わなければならない。分かるかな?」
 真子は上目づかいにお兄ちゃんの顔を見上げて肯いた。
「真子ちゃんには魔法はまだ早いかも知れないね・・・」
 お兄ちゃんはそう言って、どこか遠くを見つめるような目をした。
「大きくなって、いろんな悲しい思いや辛い思いをいっぱいして、そうしたらどんな魔法が必要かきっとわかるようになる。その時は僕が、真子ちゃんに魔法を教えてあげるよ」
 真子は明お兄ちゃんの言う、いろんな悲しい思いや辛い思いをしたら・・・という話に、なんだかとても気が重くなってしまった。魔法が使えなくてもいいから、できればそんな思いはしたくないと思ったのだ。
「明お兄ちゃん。魔法を使えなくてもいいから、真子はできればいろんな悲しい思いや辛い思いをせずにいたいな・・・」
 つぶやくようにそう言うと、お兄ちゃんは優しい眼差しでこう言った。
「そうだね。真子ちゃんは今のままずっとこの家にいて、ママやパパと一緒に暮らしてさえいれば、きっと幸せでいられると思うよ。魔法なんて使えなくても、その方がずっといいと僕は思うよ」
 お兄ちゃんの言葉に、真子はようやく明るさを取り戻し、元気な声でワン!と答えた。そしてお兄ちゃんの膝の上からぴょんと飛び降りると、さっき床に落としたきりのボールを急いで取りに行った。
「明お兄ちゃん。もう1回ボール遊びして!」
 真子はそう叫ぶと、拾ったボールを口にくわえ、ふたたび明お兄ちゃんのところへと駆け寄って行ったのであった。


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