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白い犬

「あのぉ・・・、アルバイト募集の記事を見たんですけど」
 境内の桜もすっかり葉桜となったある日の昼下がり、制服を着た女子高生が社務所の窓から首を出し声をかけた。
「ああ、巫女さん募集の記事ね・・・」
 そう言って姿を現したのは、社務所の端っこでいねむりをしていたらしい普段着姿の宮司である。宮司はあくびまじりに立ち上がると、入口の鍵を開け女子高生を奥へと案内した。
「はい、ここで待っててね。すぐに面接係が来るから」
 宮司は女子高生を6畳間の和室に通すと、そう言って彼女をその場に残し立ち去ろうとした。
「え?宮司さんが面接なさるんじゃないんですか?」
 女子高生が面食らった声で尋ねる。
「いやあ、実は巫女さんの募集をしたのは僕じゃないんだよ」
 中年の宮司は困ったように頭をかきつつ、和室の襖を開けて奥の座敷にちょこんと座っている白い犬を指差した。
「きみの面接係は、あの犬なんだよ。白っていうんだけどね」
 女子高生は合点のいかない顔で宮司を見上げた。
「犬が面接係ってどういうことですか?」
 やや剣のある口調である。
 そこへ白と呼ばれた犬が近づいて来て、恐る恐る女子高生の匂いを嗅ごうとした。しかしすぐに女子高生が追い払おうとする素振りを見せたので、白は怯えたように奥の座敷へと逃げ戻った。
「うーん。どうやら気に入らなかったみたいだなぁ」
 宮司はそうつぶやくと、女子高生に向かってこう言った。
「残念だけど、ご縁がなかったようだね。白はきみが気に入らなかったみたいだ」
 けれど女子高生は納得がいかないといった表情で、宮司にかみついた。
「巫女を選ぶのに、犬に選ばせるなんておかしいと思います!」
 だが宮司は首を横に振り、申し訳なさそうに言った。
「巫女というのはね。澄んだ心の持ち主にこそ相応しい御役目なんだよ。犬というものは、独自の感覚で不思議と相手の心を読み取るものなんだ。特にあの白は、とても優しい澄んだ心を持っている。『類は友を呼ぶ』っていうだろう?だから僕は、面接係を白にお願いしているんだよ」

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