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 幾重にも石が積み上げられた城壁をぐるりと回り、北面にある通用門を目指して馬を進める。

通用門は、他の門と違い住民の往来が激しいため、日中は両開きの巨大な門扉が開かれたままになっていた。
もっとも、門の前には屈強な二人の兵が槍を手に立っていて、出入りする者の中に不審者はいないか常に見張っている。

カムルたちが門に近づいて行くと、早速一人の兵がこちらへとやって来た。

ティラフィムは城壁の内側が迷宮のようにいりくんでおり、城を囲む城砦まで辿り着くのは至難の技であった。この城砦の町が完成してから、何度となく足を運んでいるカムルたちでさえ、案内役なしに城へは容易に近づけない。

「これは・・・、カムル殿でしたか。今日は何の御用ですか? 」

馬上のカムルを見上げ、衛兵が言った。良く見ると、顔馴染みの男である。
馬車に乗せた輿を振り返り、カムルは答えた。

「わたしの娘がこのたび嫁にいくことになってな。王にお許しを乞いに出向いてきたのだ」

「それは、お祝い申し上げます! さあ、どうぞお入りください。わたしが城までご案内致しましょう」

衛兵に言われるまま、カムルたちは門をくぐり町の中へと入って行った。
ティラフィムに来るのが初めてのトワンヌは、物珍し気に辺りを見回した。
幾つもの通りが複雑に交差する町の景観は彼女の好奇心をあおったし、行き過ぎる住民たちの肌の色や顔立ちが自分とは異なっているのを見ると、興奮を抑えきれなかった。

キング・ユーカスの治世になってから、この国が他国からの移民を受け入れ、おおいに開かれた国になったことは事実である。
トワンヌは、父が戦友とも呼ぶキング・ユーカスの人となりに、ますます強い興味を抱いた。

通りを幾度も左右に折れ、緩やかな坂道を上り下りして、ようやく建物の向こうに城砦の櫓が見えてきた頃には、日はもう高く昇っていた。
イヨンは馬から下り、案内役となった衛兵に深く礼を言って見送った。そして、徒歩で従ってきた奴隷たちに、馬車から輿を下ろし担ぐようにと命じた。
王に謁見する際、花嫁となる者は必ず輿に乗って進み出ることがしきたりとされていたからである。

城門には複数の兵が並び立っていたが、カムルたちを呼び止める者は誰もいなかった。
幾多の戦乱に出向いた彼らは、マリナ族が戦いの場で毛皮をまとうことを知っていたし、武勇の誉れ高いカムルの顔を知らぬ者もいなかったからである。

カムルが城に着いたことは、その場にいた一人の兵によって王宮をとりしきるケルブ宰相のもとへと知らされた。
ユーカスが床に伏せるようになってからは、彼が王の代わりに執務の全てをこなしていたのである。

ケルブはすぐに、寝所まで足を運んでいたシーラ王妃のもとへ行き、耳元でカムルの来訪を告げた。

「カムルが来たと? そう・・・、花嫁を連れて来たというのであれば、王への謁見を許さないわけにはいきませんね」

不愉快そうにそう言って、シーラ王妃はケルブ宰相に向き直った。

「ところで、あの者は呼んであるのですか?」

王妃の鋭い眼差しに、一瞬逡巡として目を伏せながら、ケルブは答えた。

「はい。今朝こちらに参り、別室にて王妃様をお待ちしております」
 
カムルの来訪が勘に障ったのか、それでも王妃の不機嫌さは治まらなかった。

「信頼できる男なのでしょうね? 」

「ケルブ族は、亡くなられた先王、王妃様のお父上がご存命だった頃より、王直属の密使として仕えてきた部族でございます。族長のキリウスはまだ若く、先王にお仕えする機会はございませんでしたが、有能な男との評判が高い人物。必ずや王妃様のお役に立てるものと思います」

先王の名を出したことが功を奏したのだろう。王妃はようやく態度を和らげた。

「そう。では会ってみることにするわ」

安堵したケルブは、周到に辺りに目を配りながら、王妃を別室へと案内していった。




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