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夜の湖面に揺れる青く輝く月を見つめながら、エレンは美しくも憂いに満ちたその面差しを月光のもとにさらしていた。

なんと不用心なことだろう。うっかり人の子にその姿を見られでもしたら、妖精としての彼女の力は失われてしまうというのに。

今夜のように月が明るい晩は、妖精たちはむやみに人里近い場所になど行ったりはしないもの。

それでもエレンがここまで来たのには訳があった。

あの騎士に、もう一度会いたい!

それはエレンにとって、胸焦がす初めての恋であった。

内気で、決して妖精の森にある秘密の住処から出て来ることのなかった彼女が、ふらふらとただ一人さまよい出たのは、愛しい騎士に再会したい一心からだったのである。

哀れな妖精は、報われぬ恋の虜となり、われ知らず命を危険にさらす行為さえいとわぬようになっていた。

この姿を、偶然通りがった森の守護者ユニコーンが見とがめ、木陰に身を隠していた一人の精霊を呼び寄せ尋ねた。

精霊はエレンが人の子の姿に化け、湖で水浴びに興じていた時、道に迷った一人の若い騎士に出会ったのだと告げた。

騎士は美しいエレンに心を奪われ、言葉を尽くして彼女を森から連れ出そうとしたが、エレンは頑なにそれを拒んだ。

やがて、彼女をくどくことを諦めた騎士は落胆し去って行く。

ところが騎士が森に現れなくなってみてはじめて、エレンは自分も彼に恋していたことに気づき深く後悔する。

それ以来、エレンは愛しい騎士の姿を求めて、毎晩のようにここまで訪ねて来るようになったのだと精霊は語った。

これを聞いたユニコーンは、エレンの痛ましい姿に心うたれ、せめてもう一度だけエレンを恋人に再会させてやれぬものかと思案した。


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