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さらに座っていた椅子を踏み台がわりにして立ち、ぐるりと周囲を見回すと、酒に酔いしれ笑い騒ぐ騎士たちにも聞こえるような大声をはりあげて言った。

「おい、諸君! こちらの若き騎士殿は、今年の武術大会での優勝を狙う有力候補の一人だ。みな、顔を良く覚えておくがいいぞ」

赤ら顔の騎士にそう言われて若い騎士は慌てたが、なにぶん酒宴でのこと。

明日にはみな忘れてしまうだろうと、深く気に留めることはせず、席に運ばれてきた新しい酒瓶に手をのばし、勢いよくあおった。

それを見て赤ら顔の騎士が愉快そうに笑いながら言った。

「おお、これはなかなか良い飲みっぷりだ」

そう言って、若い騎士にさらに酒をすすめる。

「ところで、貴殿はどちらの出身であったかな? 」

赤ら顔の騎士は、みるみる紅潮していく若い騎士の顔を上目遣いにのぞき見ながら、そう尋ねた。

「わたしは、北端の街エルメックから参りました」

「ほお、これはまた、ずいぶんと遠路はるばる来られたものだな」

エルメックと聞いて、赤ら顔の騎士は少々驚きの表情をみせた。

それもそのはず。

北端の街エルメックは、人が入ることを禁じられた精霊たちの住む聖域と境を接する町で、不思議な剣術を用いて一瞬で敵を倒す達人がいるという噂でも有名な街であった。

いま目の前にいるこの若者も、噂の剣術使いであろうか。

赤ら顔の騎士の脳裏にそんな思いがよぎるのを見透すように、若い騎士が言った。

「エルメックの剣術は、他の騎士の方々とは少々作法が異なっております」

「それはそれは。ぜひ一度お手合わせ願いたいものですな」

そう言いながらも、赤ら顔の騎士の顔には明らかに焦りの色が浮かんでいた。

するとそこへ、レビアント家の使用人らしい一人の老人が近寄って来て二人に声をかけた。

「恐れ入ります。お二人とお話をしたいと申されている客人がいらっしゃるのですが」

二人が顔を見合わせ後ろを振り返ると、そこには眼光鋭い初老の騎士が、従者らしい少年を伴い立っていた。





 
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