上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  •   --, -- --:--
若い騎士は、皮袋が老騎士から少年に手渡されるのを確認しながら言った。

「弟君のご友人がこの屋敷内にいらしたとして、わたしたちに会う手筈をつけて欲しいとおっしゃるのはどのような理由からですか? 武術大会に参加されるのなら、滞在客同士の交流を推奨されるレビアント卿の意向にもそうはず。直接お会いになることも可能でしょう」

たしかに、武術大会に参加する目的で逗留する者たちの交流ならば、直接会うことも可能なはずであった。

まして、この屋敷に入ることを許されている時点で、特に障害があろうとも思えない。

若い騎士に問われ、老騎士は肯き答えた。

「わたしどもは武術大会に参加するために当屋敷に参ったのではありません。レビアント卿にお許しはいただきましたが、ここにいられるのは今夜のみなのです。現在、弟君のご友人がどこにおられるのかが分からぬ以上、かわりに探していただく方をお願いするしかございません。あなたがたお二人は、ここにおられる騎士たちの中でもとりわけ社交的でいらっしゃる。人探しをお願いするには適任とお見受けしました」

老騎士の返事に、赤ら顔の騎士がまんざらでもなさそうな顔で言った。

「さすが、なかなかのご慧眼。この屋敷にいる者たちの素性についてなら、まずはわたしに尋ねられよ。おおよそのことなら聞き知っております。わたしの見る所、貴殿はエルメックかその近くの出身でござろう。いかがかな?」

老騎士が口元に笑みを浮かべた。

「エルメックからは少し離れておりますが、北端に近い土地には違いありません。しかし、どうしてお分かりになられたのかな?」

赤ら顔の騎士が得意げに言った。

「お連れになっているその少年です。月光のごとき銀色の髪。フクロウの目のように大きく凛とした眼差し。月光の民と称される北端の民の容姿そのものだ。そう言えば貴殿もエルメック出身であったな。同郷の者の匂いがするのではないか」

赤ら顔の騎士に言われ、若い騎士は内心、なるほどと得心した。

さきほど、少年が自分を見て何事かを告げようとしているように思えたのは、相手にどこか親しみを感じていたからなのかもしれない。

「それで、礼はたんまりいただけるのかな?」

赤ら顔の騎士が抜け目ない顔で言った。

老騎士はにやりとした顔で答えた。

「もちろん、貴殿にご満足いただけるだけの礼をさせていただきましょう」

武術大会に優勝すれば、剣術修行という名目でさすらう貧困騎士たちにとって、とびつきたくなるほどの賞金が与えられた。

しかし、武術を奨励するレビアント卿は、勝利を逃した者たち、つまり参加者の全てに幾ばくかの金貨を与えていたのである。

実のところ、それが目的でこの武術大会に参加する者も少なくはなかった。



スポンサーサイト

WHAT'S NEW?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。