上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  •   --, -- --:--
西の塔の広間に集う騎士の一人に声をかけ、リカルドは彼を屋敷の中庭へと誘った。

「お話とは何ですか?」

周囲を気にかけながら、リカルドがこたえた。

「あなたさまを見込んでお願いしたいことがございます。武術大会に出る前の腕ならしのつもりで、一つ仕事を請け負ってはもらえませんか」

「腕ならしということは、剣の試合ということですか」

青生地に金糸の縫い込まれた立派な身なりのその騎士は、人好きのする明るい表情をうかべて言った。

「詳しいことを話す前に、先にご承諾いただきたいことがあるのですが・・・」

対するリカルドは、水を差すような暗い表情で騎士を見つめ念をおした。

「この仕事を受けたことについては、いっさい他言無用でお願いしたいのです。また、仕事の依頼主が誰であるかも詮索無用にしていただきたい」

「わかりました」

意外にあっさりとした口調で騎士がこたえた。

「それと、ひとつお聞きしたいのですがー」

飄々とした騎士の態度に、リカルドは思いきってたずねた。

「この武術大会に参加した理由は何ですか?」

「無論、自分の腕前を試したいことが一番の理由です。そちらが聞かれたいのは、金や職にありつくためかということでしょうが、それは考えてはいません」

真顔でこたえた騎士に、リカルドが重ねて言った。

「ほお、では腕試しだけのためと?」

「レビアント卿の御厚意で騎士たちに報酬が与えられているのは知っていますが、わたしは辞退しようと思っています」

「それはなぜです。武術大会に参加する者すべてに与えられるものですから、ご辞退されるには及びません」

「このように屋敷に逗留させてくださり、食事まで振る舞って下さるのです。それ以上の御厚意は少々荷が重い」

「荷が重いとは?」

「領主殿にお仕えするのでなければ、不義理することになりましょう」

「それは戦になった時に、という意味でございますか」

「そうです」

「つまり、義理立てされている方がおあり、ということですね」

「ご詮索は無用に願います」
 
騎士は一瞬睨むような目をしてリカルドを見つめたが、すぐに表情を和らげた。

「なるほど。承知致しました」

リカルドは出身地を申し出なかったこの騎士の素性に興味を抱いていたが、この会話をつうじて、恐らく西南の地の出身であろうとの勘を働かせた。

西南の地は大陸をほぼ横断する街道の要所となっており、この地出身の者は諸国を旅する自由民が多いと聞く。

優れた商才を発揮し国を富ます一翼を担ってきたため、レビアント卿もそれ以前の国王も彼らを兵役につかせることはしなかった。

彼らには剣を取らせるより、商いに励ませるほうが国のためだと歴代の国王に思わせてきたのである。

かりに隣国と戦がおきても、彼らは商いのために敵国に攻め込むことはない。いつの世も戦が終われば、昨日の敵が今日は味方となるもの。

こだわりなく商いを行うためにも、彼らは誰かを敵に回すことを好まなかった。



スポンサーサイト

WHAT'S NEW?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。