ファンタジーガーデン

自作のファンタジー小説と日々の日記のブログ

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童話 メリルさんの悩み 7

 08, 2012 18:19
 老人は持って来た木箱をテーブルの端に置くと、椅子を引き寄せイジーのそばに腰かけた。イジーは体を柔らかな布で全身をくるまれ、テーブルの上に寝かされていた。冷えた体が温められ意識は戻ったものの、まだ全身にしびれるような激しい痛みが走る。彼はぶるっと身を震わせると、翼をたたんで身をすくませた。イジーはすっかり情けない気持ちになってしまった。
「かなり長旅をして来たのだろう?ひどく疲れているようだね」
 そんなイジーをねぎらうように、老人は言った。そして、さきほどの木箱のふたを開けると、中からなにやら取り出した。それはいびつな形をした、小さな木の実のようなものであった。
 「この香りを嗅いでごらん」
 老人はつまんだ木の実を手のひらの上に乗せ、そっとイジーに差し出した。嗅いでみると、とてもいい香りがする。イジーは全身から痛みが消えていくような不思議な感覚に襲われた。
「これは、名もなき花の球根なんだよ」
 途端にイジーは、えっ?!と小さく叫びあとじさりした。
「大丈夫、心配はいらないよ!これを嗅いだからといって、死んでしまうようなことはないからね」
 老人は慌ててそう言ったが、イジーはメリルさんから教わっていた。「名もなき花」には不用意に近づいてはいけない。その芳香は時として強く香り、命を奪うことさえあるのだからと。
ーーそれに、メリルさんにしか育てられないこの花の球根を、なぜこの老人は持っているのだろうか?
イジーは老人の顔をまっすぐに見つめた。悪い人にはみえなかった。だが、メリルさん以外に球根を持っている人など、いるはずもないのである。
 するとそんなイジーの心を見透かしたかのように、老人が言った。
「私は泥棒ではないよ、からす君。きみはこれをメリルさんから盗んだと思っているようだがね。だがそうではないんだ。これは私が彼女に譲り受けたものなんだよ。名もなき花は彼女にしか咲かせることはできない花だ。だからこれは、メリルさんの育てている球根の子株を分けてもらったものなんだよ。彼女は私に、(もしかしたらあなたにも、この花を咲かせることができるかも知れませんーー)とそう言って、この球根を私に分けてくれたんだよ」
 老人はそう言うと、大事そうに球根をまたもとの木箱の中へとしまいこんだ。
「ーーさて。名もなき花の持つ力を知っているということは、君はファンタジーガーデンに住んでいたのかな?」
 老人が問うと、イジーは何度も大きく首を縦に振って答えた。
「そうです!」
 そんなイジーのしぐさに、黙って様子をうかがっていたデービッドが口を開いた。
「ファンタジーガーデンっていえば、以前クリスが造園を手伝ったって言っていた、あの庭のこと?」
 老人はデービッドの方を振り返ると、「そのとおりです、デービッド様」と答えた。
 老人は、重ねてイジーにたずねた。
「それならば、何故こんな遠くにまでやって来たのだね?町に住むよりはるかに、あそこは住みよいところだろうにーー」
 するとイジーは、激しく首を横に振り語気を強めて言った。
「僕はファンタジーガーデンからこの町に移り住んできたわけじゃありません。大切な用事があって来たんです!」
 イジーは老人に、彼がこの町に来た訳をーーとりわけ、なんとしてでも訪ね人を探し出したいのだということを強調して説明した。すると老人は、私にできることはお手伝いするよ、と言ってイジーに尋ねた。
「それで、その手紙の主とは誰なんだね?」
 イジーは声を弾ませて言った。
「チャールズ・ブラントっていう人です!」
 
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COMMENT - 2

Sun
2012.09.09
19:10

ガボ #-

URL

No title

はじめましてガボと申します。

私も創作で、自称「ファンタジーどうわ」を掲載しています。
他の方が書かれている童話を初めて拝見させてもらいました。

結果、、7話まで一気に読んでしまいました。

また書かれるスピードと量が多いのに驚きます。私は週に1ページの
ペースです。

これからも拝見させていただきますね。
よろしくお願いします。



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Sun
2012.09.09
20:18

エンジェルズアイ #-

URL

ガボテンマサ様


はじめまして。コメントありがとうございます。
童話を書かれるんですね。v-410私の作品を読んだ感想など、お聞かせいただければ嬉しいです!
また、是非お立ち寄り下さい。お待ちしています。

Edit | Reply | 

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