ファンタジーガーデン

自作のファンタジー小説と日々の日記のブログ

Take a look at this

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  •   --, -- --:--

童話 メリルさんの悩み 8

 10, 2012 23:34
「チャールズ・ブラント……」
  老人はそうつぶやいて、首をひねった。聞き覚えのある名前なのだが、どうしても思い出せない。
 考え込んでいるところへ、デービッドが話しかけてきた。
「クリス。チャールズ・ブラントっていう人がどうかしたの?」
 そこでクリス老人は、イジーとの会話の内容をデービッドに説明した。するとデービッドは驚いた様子で、ついさっきその人物の乗った馬車に、イジーがひき殺されかけたばかりなのだという話をした。
「ーーでも、チャールズ・ブラントと名乗った人は感じの良い紳士だったよ」
 デービッドがそう言ったとき、クリス老人はポンと膝を叩き、「思い出しました!」と叫んだ。
「チャールズ・ブラント氏は、有名な大富豪でございます。以前、伯爵様のお屋敷で一度お目にかかったのですが、お若いながらも人望を兼ね備えた好人物とお見受けしました。かれこれ、10年ほどは経ちましょうか--。デービッド様はまだお小さかったので、ご存知ないとは思いますが」
 二人は、チャールズ氏の居場所をつきとめるには、マーシャル伯爵の執事、ギルバート氏に依頼するのが最も早道であろうと相談した。
「ねえ、クリス。イジーに僕の名前を伝えてくれる。そして僕が、是非友達になりたいって思ってることもね」
 デービッドはクリスにそう言って、二人を心配そうに見つめているイジーの方を振り返り、笑みを浮かべた。
「分かりました、デービッド様。イジーはとても賢いカラスですからね。私もきっと、デービッド様の良い友達になるのではないかと思います」
 クリス老人はそう返事して、早速イジーにそのことを伝えた。名もなき花の球根の香りを嗅ぎ、すっかり元気を取り戻していたイジーは、これを聞き羽をばたつかせて喜んだ。
 イジーは思った。クリス老人は、確かにメリルさんの友人に違いない!だって、大切な「名もなき花」の球根をメリルさんが譲ろうとしたくらいだもの。人間の友達がいれば、メリルさんの悩みを解決する糸口が見つかるかも知れない。イジーは、翼を広げて天井へと舞いあがった。全身の痛みが嘘のように消えている。彼は上機嫌でカーと鳴き、部屋をぐるりと一周すると、すーっとデービッドの肩の上に舞い降りた。
「さあ、行こう!ギルバートさんに君の訪ね人を探してもらわなきゃね」
 デービッドはそうイジーに話しかけ、クリス老人とともに屋敷へと向かった。

 ーーその頃、チャールズ・ブラントは、逗留先の友人宅の居間で屋敷の主と歓談していた。
「デービッド・マーシャルか。僕も彼の噂は聞いているよ。マーシャル伯爵が溺愛しているらしい。母親譲りの端正な顔立ちをしていると、細君もずいぶんと褒めそやしていたな」
 肘掛椅子に腰かけ、ゆったりとパイプをくゆらせながら、恰幅のよい紳士が笑いながらそう言った。
「ああ。確かになかなかの美少年だったよ」
 屋敷の主の向かい側の椅子に座り、じっと傍らの暖炉の火を眺めながら話していたチャールズは、顔を上げにこやかな表情で相槌をうった。
「だが、見かけによらず度胸のある少年だよ。馬車の前に飛び出すなんてね」
「ーーなるほど。だが怪我がなくて何よりだったよ。孫に傷でも負わせれば、伯爵の不評を買いかねない。後あと面倒なことになるだろうからね……」
 屋敷の主は、やや険しい顔つきで友人を見据えた。チャールズは顔をしかめ、無言でうなずいた。
 しばらく二人の間に沈黙がながれるーー。ややあって、再びチャールズは友人にきりだした。
「ーーところで例の件だが、なんとかなりそうかな?」
 椅子から身を乗り出すチャールズに、屋敷の主は難しい表情をした。
「……メリル夫人のことか?」
 チャールズは、固唾をのんで友人の返事を待った。




 
スポンサーサイト

COMMENT - 0

WHAT'S NEW?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。