ファンタジーガーデン

自作のファンタジー小説と日々の日記のブログ

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ユノーの友人 10

 14, 2013 23:57
 ユノーは返事をしなかった。
 スミスはどうしてよいかわからず、そこに突っ立ったまま、レグルスとその傍に付き添うユノーとを見つめていた。
 森はうす暗く、不気味なほどしんと静まり返っている。
 仮に何か物音でも聞こえてこようものなら、恐らくスミスはすぐにそちらへの警戒を強め、小さな友人の態度にとりたてて落胆することもなかったであろう。けれども森からは、彼が注意を払わねばならぬような不審な気配はまるで感じ取れなかった。
ーーもののけの森。
 神秘の谷へとつうじるこの森を、人々はそう呼んで忌み恐れていた。実際、人を寄せつけぬ深い渓谷に閉ざされたこの地は、人とは異なる世界に生きるもののけたちのすみかとなっていた。彼らは昼夜を問わずこの森を徘徊してはいたが、決して渓谷を抜け人の住む地へとさまよい出ることはなかった。それは彼らが古(いにしえ)の昔から、ある一つの戒めにより縛られていたからである。
 ただ、この森を束ねる守り主と、それに付き従うもののけだけは例外で、彼らだけは自由にこの森と人の住む外界とを行き来することが許されていた。
ーースミスはかつて、この森の守り主に付き従うもののけであった。その名残で今でも彼は、自由にそれぞれの地を行き来することができるのだった。
 ただそれゆえに、彼は守り主に会うのが気が重くもあった。
 守り主は、自分が最も信頼を置くものを従者に選ぶ。スミスも守り主にたいそう目をかけられ付き従うようになったものであったが、ある時、神秘の谷に住む精霊に外界への案内を乞われ、それがきっかけで精霊に付き従うものとなったのであった。
 森の守り主に受けた恩を仇で返した・・・そんな自負がスミスにはあったのである。
「もののけたちは、レグルスを見たら襲ってくるだろうね・・・」
 ファンタジーガーデンという楽園で育ったレグルスは、もののけたちの目にはさぞやご馳走にうつることだろう。純粋な魂をもつ生き物は、彼らには極上の食糧となる。
「レグルスを目立たぬように運ばなければならないね。いくら僕でも、腹をへらしたもののけの群れをなぎ払える自信はないよ」
 スミスがぼそりとそう言った。
「そのことなら、わしに一つ考えがある」
ユノーは、森の南側に立つひときわ高い杉の大木を指差して言った。
「まずはあの杉の木のところまで、レグルスを運ぶことにしよう」
 スミスはユノーが何か妙案を思いついたらしいことを喜び、眠っているレグルスをふたたび自分の背中に乗せ川沿いの道を南に向かって歩き出した。
 もののけが住む森とはいえ、ここは精霊のすむ聖域とも接し人界とを隔てる役目を担う地でもある。麗らかな陽射しを浴びれば心和み、香しい風が通り抜ければ胸が高鳴りもする。ユノーはかすかに、レグルスを追って彼らと共にこの地を訪れたものの存在を感じ取っていた。
(彼に一役かってもらうことにしよう)
 ユノーは、そう心でつぶやいていた。

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