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自作のファンタジー小説と日々の日記のブログ

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何事もない日々を過ごして

 17, 2015 23:51
夕べからやけに風が強い。
季節の変わり目、というやつか。

丘の上に建つこの洋館が気に入り購入したのは、あるまとまった金が入ったからだった。
だが住み始めてみると、都会暮らしが長い自分には何かと不便に感じることが多い。

それでも、住めば都ということわざどおり。
最近は、しみじみ居心地の良さを感じ始めている。

何より良いのが、何事もない日を過ごせるということ。

何事もないからといって、別に退屈しているわけではない。
朝は小鳥のさえずりで目をさまし、
ベッド脇のプレイヤーで、お気に入りの古いレコードをかける。

毎日時間に追われ、多忙な毎日を過ごしていた自分には、これはこの上ない贅沢だ。

何事もない日を過ごすこと。
実はこれが、僕の今の仕事だ。

さる研究機関からの要請で、僕は何もせずに過ごすよう指示されている。
いっさいのストレスを感じず暮らした場合、人の心身にはどのような変化が現れるのか、
それをデータ化しようという実験の対象に選ばれたのだ。

だから、家でのんびり過ごす。
たまには、気分転換に外出もする。
家事など身の回りのことは、研究機関に雇われた家政婦さんがやって来て全てやってくれる。

まさに夢のような暮らしだ。
とはいえ、最初は戸惑いがあって、この生活にあまり馴染めなかった。
話し相手がいず、孤独を感じたこともあるだろう。

しかし半年も経つと、状況は一変。
この暮らしが実に快適であると実感するようになる。
人はやはり、遊んで暮らすのが一番ということだろう。

そんな暮らしが二年も続いたある日、研究機関から手紙が届いた。

もう実験データは十分取れました。あなたは来週いっぱいで、この仕事は首です。

なんてことだ!
もともと、実験がいつまで続くかということは決まっていないといわれていた。

しかし、こんなに唐突に急に首になるなんて!

僕は天国から地獄に突き落とされた。

こんなことなら、こんな実験に参加しなければ良かったとさえ思った。

人間、楽から苦に転ぶほど辛いものはない・・・。
そのことを今更ながらに思い知らされた。

そうして1週間後、研究所員と名乗る一人の男が洋館を訪ねて来た。

「いかがですか、今の心境は?」

男は、街頭アンケートでもするかのように悪びれない口調で僕に質問した。

「最悪ですよ。明日からはまた、どうやって生活しようと悩まなければならないわけですから」

勢いぶっきらぼうにそう答える。

しかし男は、とても満足げにうなずきながら言った。

「そうですか。やはり、そういうものでしょうね・・・」

男はそう言うと、涼し気な目で僕を見つめ、こう付け足した。

「心配はいりませんよ。三日も経てば、あなたは心身共に、すこぶる健康な状態に戻っているはずですから」

僕は男のことを、みえすいた嘘を言う奴だと思い、思いっきり睨み返してやった。


そして三日後、僕あてに研究機関から再び手紙が届いた。

もう一度、実験に参加しませんか?という内容の手紙だった。

しかしこの時の僕は、もう実験に参加するのはごめんだと思うようになっていた。
いつまた突然首になるかも知れない仕事に就くなんて、不安定極まりないからだ。

僕は参加しない旨の返事を出した。

すると数日後、また僕のもとに手紙が届いた。

実験にご協力いただき誠にありがとうございました。
この度の実験により、ストレスのない生活を続けることで、
人は心身ともに正常な状態にリセットされることが明らかになりました。
次回の実験に不参加の意思を示されたことが、何よりもの証です。

貴殿の今後のご活躍を、心よりお祈り致しております

何事もない日々を過ごしてみて、僕は感じた。

非日常の暮らしは所詮、日常ではありえない。

健康的に暮らすという事は、きわめて日常的に暮らすということにほかならないのだと。



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