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レッド・キングダム 第1章 第1話

 13, 2016 22:56


村はずれの丘の上から、エザックは額に汗しながら働く奴隷たちの背中を眺めていた。
彼らは荷車に積まれた大きな皮袋を、掛け声とともに重そうに背負い、マリナ族の族長カムルの屋敷へと次々と運びこんでいる。
荷物の中身は食糧。
砦を通る際、奴隷頭のクシュイがそう申告したことをエザックは知っている。
しかし、食糧に紛れ込ませた多くの武器が運び込まれていることに、エザックは勘付いていた。

また、争いの火種が持ち込まれる・・・・・・。
エザックの脳裏に、戦火に焼かれ逃げ惑う、村人たちの憐れな姿が掠める。

王が大病を患っているという噂が、辺境のこの村にまで届いて数か月。
キング・ユーカスの命の灯が間もなく尽きるであろうことを、エザックは知っていた。
彼は、王の後継者として相応しい者が誰であるかを、王に進言すべき立場にある。
多くの者が、二人の王子のどちらかが王位に就くものと思っているであろう。

しかし・・・・・。
王位は神の定めしもの。
ましてや・・・・・ユーカスは名を奪いし者。
彼はその名を主(あるじ)に返し、王位を譲らねばならない。
エザックは、王宮からの使者がもうすぐこの村に到着することを予見していた。
玉座に就く者の頭上に、彼が王笏をかざす日はもう近い。

「エザック様。主が、そろそろ屋敷にお越し下さいと申しております」
背後から若い女の声がして、エザックはおもむろに振り返った。
声の主は、カムルの身の回りの世話をする女奴隷の一人、アニタである。
「宴の準備が出来ましたか」

アニタは、若き賢者の涼やかな声にうっとりとして頬を赤らめた。
聖職者にしておくには、もったいないような美貌の持ち主。
彼を崇拝する女官たちが神殿に列をなすという噂も、あながち偽りではあるまい。

「はい。花婿一行がお着きになり、祝宴の支度も整いました」
エザックは軽く肯き、フードを目深に被りなおした。
荒れた大地は至る所に岩を突き出し、岩場の隙間にこびりつく枯れ草は、うっかりすると人の足下をすくう。
しかしアニタは、そんな悪路をものともせず、慣れた足取りで坂を下って行った。
アニタはただの女奴隷ではないな・・・・・・とエザックが疑ったのは、この時が最初である。

二人がカムルの屋敷に着くと、門をくぐった中庭には立派な幕屋が張られていた。
女奴隷たちの手による色とりどりの飾りつけが、急仕立ての幕屋を花嫁の控え所らしい豪奢なものへと変えている。
幕屋の隙間から漏れる明るい光と、中から聞こえて来る女たちの楽しげな笑い声。
そこには、幸せに胸弾ませる若い娘と、それを囲む家族や隣人たちの喜びの顔があった。

エザックは聖職者として、この家に招かれた。
主のカムルは穏健派で知られる少数民族の族長で、エザックの師であるイレンカとは旧知の仲である。
このたびカムルの娘の婚儀がまとまり、カムルはイレンカに、ぜひ花嫁を祝福して欲しいと使者を送った。
しかし体調の優れないイレンカは、その役をエザックに託したのである。

若き聖職者の評判は、こんな辺境の地にもあまねく届いていた。
神託の降りし聖なる賢者ーー

イレンカの代役として、彼が花嫁の祝福に訪れると知った時、マリナ族の村人たちは驚きどよめいた。
一時はまるで、この村そのものが神の祝福を受けたかのような騒ぎにさえなった。
アニタはマリナ族の出ではない。
己の出自のせいか、彼女は村人たちの浮かれ具合をどこか冷ややかな目で見ていた。

しかし、エザックを初めて見た時、彼女は村人たちが彼を特別の存在として崇めるのも当然に思えた。
この世に、これほど清々として凛たる風貌の美青年がいようとは!
村人を嘲り、神託をも軽んじようとしていたわが身を恥じ入った。

「ようこそ! エザック様。さあ、どうぞ奥へとお入りください」
開かれた扉の向こうから、豪放磊落な人柄で知られるカムルの大声がなり響く。
穏健派の旗頭とも目されるカムルだが、彼自身は勇猛な民族マリナ族の長。
その血筋を辿れば、幾多の戦いを生き抜いた英雄たちの名があまた連なる。

「カムル族長、今日は祝いの宴。まずは家長たるあなたに祝福を申し上げます」
カムルは破顔し、奥にいた妻と子供たちとを招きよせた。
「あなたがたに、神の祝福があらんことを! 」
その場に居合わせた者すべてが、絨毯の床に伏して深々と頭を下げ、神に祈りを捧げた。
敬虔なるマリナ族ーー
勇猛なる彼らの魂が、信仰によって一つの絆に結ばれていることを、アニタは知っている。

「幕屋にて花嫁と花婿が控えております。エザック様は、どうぞそちらへ」
一同が立ち上がり、おのおの宴席につく頃合を見計らって、カムルの妻が言った。
アニタは宴席の客に酒をふるまうため、後ろ髪を引かれる思いで、彼らの後姿を見送った。

その夜。
祝福の秘儀を終え、彼のために用意された天幕に戻ったエザックのもとへ、一人の客人が訪ねてきた。
豊かな白髭をたくわえた、矍鑠(かくしゃく)たる白髪の老人。
その名をレギオンといった。

彼は以前、一度だけこの老人に会ったことがある。
それはまだ、イレンカのもとで修行していた頃の事であった。
レギオンは聖職者でありながら、神殿にての礼拝に携わることはまずない。
ただ一人荒野にあって神と対峙し、やがて「荒野の賢者」と呼ばれ、敬われるようになった人物である。
そのレギオンが突然訪ねて来たと知り、エザックは何故か胸騒ぎを覚えた。
新たな啓示を受けての来訪ではないかと、怖れを抱いたからである。

しかし老いたる賢者は、古き友を訪ねるかのような温かな眼差しを若き聖職者に注いだ。
「久しぶりですな、エザック殿。この老人を覚えておいでですかな? 」
たちまちに心をほぐされ、エザックもつい口元を緩める。
「七年振りでございます。あの頃はまだわたくしも幼く、レギオン様を海のごときお方と仰ぎ見るばかりでございました」
老賢者は目を細め、幾度もうなずきながら床に胡坐を組んだ。

「この老いぼれが来たのには、訳があってのこと。ユーカスの名を継ぐ者の消息が、どうやらつかめそうなのです・・・・・・」
「それは本当ですか!」
思わず、エザックは身を乗り出した。



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COMMENT - 2

Sun
2016.01.17
10:32

nanaco☆ #-

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続きが気になります!

エンジェルズアイさん、こんにちは!

新たな連載、楽しみにしていました。
しかも私の大好きなファンタジー風の物語*^^*
とても楽しく読ませていただきました。

やはり気になるのは、美貌の聖職者エザック(笑)
思わず守り人シリーズのシュガと重ねてしまったりして…^^
アニタの出自も気になる所ですし、今後どんな展開になるのでしょう?

色々と想像しながら、
続きを楽しみに待つ事にします♪

Edit | Reply | 
Mon
2016.01.18
09:15

エンジェルズアイ #-

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Re: 続きが気になります!


こんにちは、nanacoさん!
コメントありがとうございます。

美男子エザックは、私もお気に入りです(笑)
女性読者には、やはり注目度高い存在ですよね(^^)v

ちなみに今後、男性読者を魅了する絶世の美女も登場する予定(^_-)-☆

レッド・キングダムは、3世代に渡る長編作品を構想し、執筆を開始しました。
そのため、それぞれの代における主人公が異なる形式を取ろうと思っています。

第1章では、これから登場するキング・ユーカスが主人公となります。

一見無関係に見える人たちが、実は深いつながりを持っている・・・・

一筋縄ではいかない展開に、どうかご期待下さい(^^)/


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