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自作のファンタジー小説と日々の日記のブログ

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月夜物語 11

 22, 2017 22:39
老騎士の姿に化けた精霊は、二人の騎士が腕試し目的で武術大会に参加しているとは思っていなかった。

それゆえ彼らに礼金を与えれば、こちらの思い通りに動かせるであろうと踏んだのである。

とくにエルメック出身という若い騎士は、他の騎士にくらべてずいぶん貧相な身なりをしていた。

さぞ金を工面するのに、難渋しているに違いない。

そもそもエルメックは貧しい辺境の地であった。

土地はやせていて作物はほとんど実らない。

しかも周囲を高い山脈に囲まれているため、街道筋にあるレビアント領主国とは異なり、人の往来が極端に少なかった。

そんな人々の暮らしを支えているのは主に酪農で、わずかに摂れる作物と羊や牛の乳からこしらえたチーズなどの乳製品を周辺の街に売り、生業としていた。

いっぽうレビアント領主国は、東と南が海に面した交易の盛んな豊かな国であった。

エルメックは西の大国カルドナ国の支配にあったが、聖域沿いに東西に延びる北端の町のため、レビアント領主国とも境を接していた。

信仰心の篤いレビアントの民は、貧しいとはいえ聖域近くに生きるエルメックの人を深く崇敬してもいた。

エルメックに近い北の民の多くが、彼らの持つ不思議な力を目の当たりにし、それを伝え広げていたためである。

精霊に従いレビアント家を訪ねた少年もまた、エルメックの民を崇敬する者の一人であった。

少年の暮らす森からエルメックまでは険しい山脈の壁に隔てられていたが、山越えをいとわず歩きとおせば二日ほどの距離であった。
 
そのため、国が二国に分断される以前にエルメックから移り住んでいる者も多く、少年の祖母も生まれはエルメックであったと聞かされていた。

はじめ若い騎士を見た時、少年は彼の面差しに亡き祖母の面影を見て、思わず話しかけたい衝動に駆られた。

しかしそれと同時にエルメックの民が持つ不思議な力に恐れを抱き、目が合った途端、身を隠さずにはいられなかった。

しかしこの行動は聖霊の怒りをかった。

彼は森で精霊と約束をかわしたことを思い出す。

精霊との約束は神との約束。

少年はローブの下に隠し持つ樫の杖を握りしめながら、じっと精霊と騎士たちの会話に耳を傾けた。


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