ファンタジーガーデン

自作のファンタジー小説と日々の日記のブログ

Take a look at this

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  •   --, -- --:--

童話 メリルさんの悩み 13

 27, 2012 00:59
 チャールズ・ブラントがマーシャル家の使いの者からギルバート氏の伝言を受け取ったのは、それから間もなくのことであった。それは機転のきくギルバート氏がすぐさま数通の招待状をしたため、チャールズが立ち寄りそうな場所に使いの者を走らせたからである。こういった点においてギルバート氏は実に抜け目がなく、かつ迅速な采配をふるえる男だった。
 手紙を受け取ったチャールズは、デービッドの招待客には自分だけでなくクリス老人も含まれていると知って少なからず驚いた。
 なんという偶然だろう!こちらから会う手筈を整えるつもりだったクリス老人に、好都合にも顔を合わす機会に恵まれたのである。その場に居合わせた屋敷の主も、思わぬ招待状の内容に目を見張った。そして自分も同席しようと申し出たが、チャールズは(呼び出されたのは自分ひとりだからと)これを丁重に断った。
 屋敷の主はやや不服そうな表情を浮かべたが、もとよりマーシャル家は招待もなしに気楽に足を運べるような場所ではない。チャールズが拒まずとも、彼が訪問するのはやはりためらわれることには違いなかった。
「何の用があってデービッドがきみを呼び出したのかは分からないが、マーシャル家に行けば伯爵ともお会いすることになるだろう。くれぐれも馬車の一件で伯爵の機嫌を損ねることがないよう気をつけたまえよ」
 屋敷の主はこういって、チャールズを屋敷から送り出した。


 ギルバート氏はチャールズ・ブラントあての手紙を使いの者に手渡したあと、応接間にいるはずのクリス老人をたずねた。
 彼が階下の応接間へとおりていくと、ちょうどメイド頭のセシリアが眉をひそめて応接間から出て来るのにでくわした。彼女はギルバート氏の顔をみるとすぐに平静さをとりつくろい一礼したが、セシリアが応接間の客に不愉快な感情を抱いているのは明らかだった。
 遠目に応接間をのぞきこむと、部屋の奥の暖炉脇の椅子に腰かけたデービッドとクリス老人とが、真剣な表情で何やらしきりに小声で話しこんでいる。クリス老人の肩には一羽のカラスがとまっていた。ギルバート氏は、セシリアが不快そうにしていたのはこのこのカラスのせいに違いないと思った。二人に近づいて行くと、彼らは靴音に気がついたのか、ふいに話をやめこちらを振り返った。
「ギルバートさん!」
 デービッドはギルバート氏に向かい、つとめて明るい表情と声で出迎えた。ギルバート氏はデービッドがチャールズに会いたい理由を述べないのは、クリス老人に関係があるのだろうと薄々勘づいていた。クリス老人への周囲の偏見の目は無論ギルバートもかねてから知るところである。
 ただギルバート氏本人は、この問題をあまり気にとめてはいなかった。クリス老人が動物と話ができるといっているのは、老人にとっての一つの信仰心のあらわれなのだろうととらえていたからである。
 他人の信仰を馬鹿にすることはできない、というのがギルバート氏の自論であった。
「チャールズに会う前に、一つお話しておきたいことがあるのですが……」
 デービッドとクリス老人の顔を交互に見つめながら、ギルバート氏はそういって胸ポケットから一枚の紙を取り出した。
「これは10年ほど前、チャールズがデービッド様の母君に送った手紙です」
「母さんあての手紙をなぜ、ギルバートさんが?ーー」
 ものいいたげなデービッドを片手で軽く制し、ギルバート氏は手紙の中身について二人にかいつまんで説明した。
 それによると、チャールズはデービッドの母が所有している土地の一部を譲って欲しいという内容の手紙を送ってよこしてきたらしかった。執事であるギルバート氏はマーシャル家の財産に関しての管理を任されていたため、デービッドの母からこの手紙への返事も託されることとなったらしい。
 詳しいいきさつは分からないか、母君はチャールズが欲しがっている土地はメリル夫人が所有する土地のすぐ近くであったため、譲ることはできないという内容の返事をかえしたとのことであった。
「メリル夫人の所有されているファンタジーガーデンでは<名もなき花>が栽培されております。国の宝といわれるこの花の保存には、伯爵もとりわけ神経質になっておられますから、母君としても旧友の頼みとはいえ、おいそれとは同意しかねたのだと思います。ところがチャールズは、どうやらまだこの一件をあきらめてはいないようです。ふたたびこの町を訪れたのも、恐らくそれが目的なのではないかと思われます」
 話を聞きながら、クリス老人は肩にとまっているイジーの方に顔を向け囁き声で彼に事情を説明した。
「でもチャールズさんはなぜ、その土地を欲しがっているのかしら。ファンタジーガーデンというのは森の奥深くにあって、辺りに住む人もほとんどいないような場所なのでしょう?」
 つぶやくようにいうデービッドに、クリス老人は冷笑していった。
「きっと<名もなき花>を手にいれたいと思っているのでしょうなーー」
スポンサーサイト

COMMENT - 0

WHAT'S NEW?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。