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童話 メリルさんの悩み 15

 09, 2012 22:24
 「チャールズに会われる理由については、わたしの口出しすることではないと承知しております。ただ、チャールズの人となりについては、お二人に誤解のないようお話しておきたいのです」
 ギルバート氏はそういって、いったん言葉を区切った。
「チャールズは商才にたけた実業家ですが、彼が<名もなき花>に執着する理由は、商品として売り出し大きな利益を得ることにはないと断言します。本当の理由は他にあるのですーー」
 ギルバート氏はそういいつつ、先ほどから床に視線を落としているクリス老人に目を注いだ。
 デービッドはギルバート氏の強張った表情から、彼が重大な秘密を二人に打ち明けようとしているのだと直感した。緊張感から、デービッドの心臓が早鐘のように打ち始める。彼はそっと傍らのクリス老人に視線を移した。しかしクリス老人はギルバート氏の話に動揺する気配はなかった。顔色ひとつ変えず、うつむいたままこちらを振り返ることさえない。
 デービットは(もしかしたらクリスは、ギルバートさんの話そうとしていることを知っているのかしら?)と、いぶかしんだ。ギルバート氏もクリス老人の様子を見て疑心暗鬼になったのか、眉間にしわを寄せ、話を続けたものかどうか考えあぐねている様子である。みかねたデービッドは、思い切ってこうきりだした。
「ーーぼくらがチャールズさんに面会したいのは、メリルさんとどんな話をされたのかをお聞きしたいからなんです」
 ギルバート氏は驚いたようにこちらを振り向き、デービッドを直視した。
「デービッド様は、メリル婦人のことをご存知なのですか?」
 デービッドは一瞬返事をためらったが、意を決していった。
「メリルさんに会ったことはありません。でも、メリルさんのことを心配している友人がいて、ぼくはその手助けをしたいと思っているんです」
 ーーそのとき、クリス老人がゆっくりと立ち上がった。


            **********


チャールズ・ブラントがマーシャル家に到着したとき、陽はすでに西に傾き始めていた。緑の木々に囲まれた屋敷の石壁はオレンジ色に染まり、壮麗な屋敷をよりいっそう鮮やかに照らし出す。チャールズは馬車をおり、その景色を感慨深げに眺めた。
 彼がマーシャル家の門をくぐるのは実に10年ぶりのことであった。当時親の遺した遺産をもとでに起業したばかりであったチャールズは、<名もなき花>を是非貿易商品の一つに加えたいとの野心を抱いていた。
 チャールズは再三にわたりメリル夫人のもとを訪ね、<名もなき花>の入手にやっきになったが、彼女はガーデン以外での栽培は不可能であるとして、彼の申し出を頑なに断り続けた。結果、栽培の拡大は困難と判断したチャールズではあったが、花のもつ効能を病に苦しむ人々に役立てたいとの熱意を抱いていた彼は、ガーデンに隣接する土地に療養所を建てることを思い立ったのであった。そしてその土地の所有者が、デービッドの母メアリー・マーシャルであった。
 チャールズにとってメアリーは、ギルバート同様幼少の頃から互いに見知っている間柄であったが、彼には彼女に対して一つ負い目を感じている出来事があった。そのため、チャールズが父の事業を手伝い始め忙殺される日々を送るようになると、どちらともなく自然に疎遠となっていった。
 数年の後、メアリーはロバートとの婚儀がまとまりマーシャル家に嫁ぐことになったが、チャールズはマーシャル家の執事となっていたギルバートに手紙を送り、彼女に対して祝辞を述べて欲しいと伝えただけで婚礼の席には参列しなかった。
 (この屋敷のどこかに、メアリーがいるのだなーー)
 チャールズは屋敷を見上げながら、ひとり懐かしさに心を震わせた。
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