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KURAMA (番外)5-前編

 13, 2012 13:11
「両想いになるおまじない?!」
 弘美が眉をつり上げそう叫ぶと、由利恵は片手に持った皿の上の団子を、また一つほおばりながら頷いた。
「ホントにおまじないで両想いになれたの~?ちょっと信じらんないなぁーー」
 弘美はそう言って、なおも疑わしげな目で由利恵を睨む。
「だって本人がそう言ってるんだから、そうなんじゃない?えーっと、確かここに入ってると思うんだけど……」
 由利恵は空になった皿をベンチに置くと、足元の荷物入れのかごの中からリュックサックをひっぱり上げた。
「あったあった!これがそのおまじないの方法だよ」
 袋を開けて取り出した小さなノートをペラペラめくり、由利恵は人差指でページの一箇所を指し示しながら弘美に見せた。一瞬戸惑いの色を浮かべながらも、弘美はノートの中を覗き込む。
「芳枝さん、このおまじないでホントに相沢さんをゲットしたのかなぁーー」
 ため息とも呟きともつかぬ声で弘美がそう言うと、由利恵はあっけらかんとした声で答えた。
「信じる者は救われるってことじゃない?だって芳枝さん、どっちかっていうと引っ込み思案な方じゃない?それがあの相沢さんに自分から近づいたっていうんだから、おまじないで自己暗示でもかけてなきゃ無理だったんじゃないのー」
 「効果あるのかなあーーこのおまじない?」
 弘美は、あいかわらず疑心暗鬼な声でそう呟いた。


ーー週末の高尾山。
 登山というよりは、人を見に来たような混雑ぶりにげんなりした由利恵と弘美は、早々に峠の茶屋のベンチに腰をおろし同僚の噂話に花を咲かせていた。
 それを同じベンチの端で聞くとはなしに聞いていた尼天狗の高尾。二人の話題にのぼっている<おまじないの方法>というのに興味をそそられ、素知らぬ顔で辺りを眺めながらも二人の会話に耳をそばだてた。

(わたし、結構相沢さん好きだったんだよねーー)

 ふと高尾の耳に、弘美の心の中のつぶやきがもれ聞こえた。
 そうとは知らぬ弘美は、何食わぬ顔で由利恵に向かって言った。
「ねえ。そのノートちょっと借りてもいい?」
 怪訝そうな顔で、由利恵が弘美を振り返る。
「ーーいいけど。弘美、おまじない信じないんでしょう?」
 慌てて、弘美は大きく両手を横に振った。
「違う違う!こういうの好きな友達いてさ。絶対知りたがると思うから借りときたいの」
 弘美は作り笑いを浮かべながらそう言って、ノートをたたむとすぐさま肩にかけていたショルダーバックの中にしまいこんだ。
 高尾は、そんな二人の様子を横目でうかがっていた。
 しばらくして二人がベンチから腰をあげ、下山ルートの方へと向かって歩きだす。
 気付かれぬよう少し間をあけて席を立った高尾は、二人の後を追いながらじっと弘美の心の声に耳をすませた。

(このおまじないで、もし相沢さんを振り向かせられたらーー)

 そんな弘美の心の声が聞こえ、「やはりーー」と内心高尾は思った。
「諦めかけた相手でも、他人のものになるのは許せない!人とはほんに妬み深い生き物よーー」
 溜息をついた高尾ではあったが、何となく弘美の行動が気になり後を追ってみることにした。


 
 京王線のとある駅で電車を降りると、二人はたわいもない話をしながら、改札に向かって歩く人混みに押し流されていった。この駅は弘美の自宅の最寄り駅であったが、帰る前に駅のショッッピングモールで軽食でもしようと当初約束をかわしていたのである。しかし一刻も早く一人でおまじないを試してみたかった弘美は、ふいに黙り込み歩みを止めた。
「ーー由利恵。悪いんだけどわたしちょっと用を思い出したから、このまま家に帰るね」
 弘美がそう言うと、みるみる由利恵は残念そうな顔つきになった。しかし人出の多さに少々疲れ気味でもあった彼女はすぐに頷いて踵を返し、連絡通路の方へと別れながら弘美に小さく手を振った。
「ーーうん。じゃあ明日また会社でね!」
 弘美は、少しの間振り返り振り返り歩く由利恵の後姿を見送った。そして由利恵が通路の階段を降り見えなくなると、彼女は足早に駅の改札を抜けモールの中へと入っていった。その後を高尾がやや距離をおいてついていく。
 やがて一軒の喫茶店の前で立ち止った弘美は、客の入りをうかがいつつも店内へと入っていった。由利恵にはああ言ったものの、弘美はすぐには自宅に帰るつもりはなかったのである。予定外の行動を取り自宅に帰ろうものなら、妙に勘の鋭い母に見とがめられ何を聞き出されるか分かったものではない。
 弘美は店内奥の、できるだけ目立たない端の席を選び腰をおろした。
 高尾も、店内を一見してなるべく弘美に近い席を探した。幸い弘美のすぐ斜向かいの席が空いているのを見つけ、高尾は弘美に背を向けるようにして腰をおろす。
 弘美は注文したカフェラテを一口すすると、ノートを開いて熱心に読み始めた。
 ノートに書かれていたのは二つのまじない法。
 一つは相手に恋人がいない場合に用いるもので、自分を好きにならせる方法。そしてもう一つは、相手が両想いの場合に用いるもので、ライバルを嫌いにさせ、なおかつ自分を好きにならせる方法である。
 弘美はこれを読んで、思わず小躍りしたい気分になった。
(もちろん芳枝を嫌いにならせて、わたしを好きにならせるおまじないよね!)

    ********


 数日後、上司から「お昼に行っておいで!」と声をかけられた弘美は、弁当箱を取りに給湯室に行き偶然相沢と同じ課の女の子たちと一緒になった。
「ねえ、知ってる?相沢さんと芳枝さん、どうも険悪みたいよーー」
 弁当箱を手に立ち去ろうとしていた弘美の足が、思わず止まる。
「ええっ!あの二人、結婚話も出てたんでしょう?」
「うん職場恋愛だからね。ばれちゃったら結婚せざるを得ないでしょう?でも、どうやらそれも怪しいらしいよーー」
 弘美はもっと彼女たちの話を聞きたかったが、そのまま立ち止っていては彼女たちに不審に思われる。仕方なく弘美は、うしろ髪引かれる思いでその場を立ち去った。
 席に戻った弘美は、おまじないの効果があったのだ!と確信し、早速今度は相手に自分を好きにならせるまじないを心の中で念じた。
(これで、わたしは相沢さんと両想いになれるわ!)
 弘美は、一人そうほくそ笑んだ。
ーーその日の帰り、隣の課の由利恵と会社の正面玄関で待ち合わせしていた弘美は、エレベーターを降りた相沢がやってくるのに出くわした。内心ドキドキしながらも、弘美はすれ違いざま目の合った相沢に、にっこりと微笑みかけ会釈した。
 途端に相沢の表情が嬉しそうにほころぶ。
 そこへ由利恵もやって来て、相沢は目礼して弘美の前を通り過ぎた。由利恵はじっと弘美の顔を見つめて囁いた。
「ーー弘美。相沢さんが芳枝さんと別れたっていう噂聞いた?」


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