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童話 メリルさんの悩み 18

 18, 2012 23:53
「ギルバート!ーーまだ脈があるぞ」
 地面にうつ伏せに倒れているクリス老人の腕を取り、脈の有無を確認していたチャールズが大声で叫んだ。
 ギルバート氏は、険しい表情のまま頷いた。クリス老人は転落の際後頭部に傷を負ったらしく、地面にはかなりの出血が広がっていた。意識も失っており、いまだ予断を許さぬ状態であることは明白である。
「分かった!すぐに医者を呼ぼう」
ギルバートはそう答えると、傍らで硬直したように立ちつくしているメアリーに目を走らせた。
 彼女はクリス老人の血の気の失せた顔を凝視したまま、すっかり正気を失っているように見受けられる。彼はメアリーのそばに歩み寄ると、彼女の肩に手をおき、「後は僕たちに任せて、君はデービッドの傍にいてやってくれ」と囁いた。メアリーはギルバートの口からデービッドの名前を聞くと、やっと我に返ったように周囲を見回してつぶやいた。
「デービッドは?……」
 呆然とした表情ではあったが、メアリーの口からは、はっきりと息子の名前がもれた。
 クリス老人が転落したとき、メアリーは不運にもそのすぐ真下に立っていた。
 偶然窓からチャールズの姿を見かけたメアリーは、居ても立ってもいられず、その後すぐに部屋を抜け出し庭へと降りて来ていたのであった。ところが、彼女が駆けつけたときには、すでにチャールズの姿はそこにはなかった。
 そして皮肉にも、かわりに彼女の目に飛び込んできたのは、恐怖を感じるほどの夥しい数のカラスの群れだったのである。怯えた彼女はすぐに屋敷に取って返し、使用人を呼んでカラスを追い払わせようとした。ところが階上からその様子を見ていたクリス老人は、慌ててそれを阻止しようと大声を張り上げたのだった。のみならず、彼は勢い窓から大きく身を乗り出そうとし、その拍子に誤って転落してしまったのである。
 何という悲劇だろう!そのときデービッドは、クリス老人のすぐ隣に立ち、それを目の当たりにしていたのである。
「何てことでしょう!デービッドは……あの子は、大好きなクリスが窓から落ちていく姿を見ていたに違いないわ!」
 メアリーはしゃくりあげるような涙声になり、そう叫んだ。
 老人は「カラスを追い払ってはいかん!」と叫びながら、運悪く転落事故に合ってしまった。横にいたデービッドは、その一部始終をずっと見ていたのである。カラスを追い払わせようとしたがために、クリスに悲劇が訪れ、それを命じたのは、他ならぬ彼の母だったのである。メアリーの心は張り裂けんばかりの悲しみにうちひしがれた。
「おお!どうしましょう。あの子は私を決して許さないわ」
 この様子を見ていたチャールズは、メアリーの肩を抱いて、しっかりしなさいと声をかけた。
「君が気弱になってどうする?!デービッドは賢明な少年だ。何も気に病むことはないさ」
 メアリーは目を伏せたまま、小さく頷いた。
 しかしチャールズは、ふいに人の気配を感じて目を上げ、思わず息をのんだ。
 いつの間に来ていたのか?彼らのすぐ目の前にデービッドが立ちつくし、地面に倒れているクリス老人の方をじっと見つめていたのである。
「デービッド?!」
 チャールズの目に映ったのは、デービッドのーーおよそ別人のようにも思える怒りに満ちた表情であった。
「クリス……。クリス!クリス!」
 少年は二人には目もくれず、哀れにも地面に身を横たえている老人のもとへと駆け寄って叫んだ。
「駄目だよ、クリス。クリス!死んじゃ駄目だ!」



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