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童話 メリルさんの悩み 21

 05, 2012 23:56
 朝の日差しが東の窓に差し込み始める頃、チャールズは目を覚まし横になっていたソファから身を起こした。
 夕べクリスとともに客間に入ったきり出てこないデービッドを案じ、彼はギルバートの執務室を借り一夜を明かしたのである。
 ぼんやりとした頭を両手で抱え込むようにして、チャールズは昨夜の記憶を辿り始めた。
 確かーー明け方近くまでは起きていたはず。しかし、その後の記憶は曖昧だ。おそらく気づかぬうちに睡魔に襲われ寝入ってしまったのだろう。
 彼はソファの背もたれに投げかけてあった上着を手に取り、袖を通しながら考え込んだ。
(あの後デービッドは、鍵をかけたきり部屋からは出て来なかったのかーー)
 チャールズは、もしもデービッドが部屋の外に出て来たら呼んで欲しいと言って、執務室で夜通し知らせを待っていたのであった。彼は軽い頭痛を感じて眉間にしわを寄せた。チャールズはもともと低血圧な性質で寝起きがあまりよくない。そこへきて十分な睡眠が取れていない彼は、すこぶる体調がすぐれなかった。
 まいったな、とうめくように呟き、チャールズはよろよろとソファから立ち上がった。覚束ない足取りで執務用の机のところまで歩いて行き、上に置かれた水差しのグラスに水を注ぐ。彼はグラスを持つといっきにそれを飲みほし、ふっと息をついた。
 デービッドが彼らを部屋から出した後、チャールズはギルバートに執務室で待つよう言われ、1階の客間から2階の執務室へと階段を昇って行った。ところがその途中、庭のカラスたちが俄かに騒ぎ出す声を聞きつけ、不審に思った彼は、廊下の窓からカラスたちの様子をうかがっていたのだった。
 そのため、メアリーには告げなかったが、クリス老人を担ぎこんだあの部屋に、カラスたちの大群が先を争って飛びこんでいく様を目撃していたのである。そしてこの光景を眺めていたのはチャールズだけではなかった。
 やがて執務室で待っているチャールズのもとにギルバートが戻ってきた時、彼を囲むように立っている屋敷の使用人たちに対し、ギルバートはカラスたちのことは決してメアリーには話さないようにと固く口止めをしていた。
 屋敷の主である伯爵とその子息であるロバート・マーシャルはあいにく共に屋敷を留守にしており、明日にならなければ戻っては来ない。そのため今の屋敷の主はメアリーということになるのだが、ギルバートはメアリーの体調がすぐれないことを理由に、余計な心配ごとを持ちこむまいとしたようであった。
(カラスたちを集めて、デービッドはあの部屋でいったい何をしようとしていたのだろうか?)
 チャールズは、デービッドが部屋から出てきたらその事を問いただそうと思っていたのだが、今になっても彼は部屋の外へは出て来ず、確かめようもない。だがあれだけのカラスの数だ。何かの拍子に騒ぎ出し、デービッドを傷つけるような事故がないとも限らない。そんな不安がよぎった彼は居ても立ってもいられなくなった。
(やはり、メアりーには話しておいた方がいいかも知れない!)
 チャールズはそう思い直し、執務室を出てメアリーの部屋を訪ねることにした。


 デービッドは彼のすぐ傍で目を閉じ、うつらうつらとしているイジーに小声で話しかけた。
「イジー!もう朝だよ」
 イジーはデービッドの声にすぐに目を開け、眠っているクリス老人の方を見やった。
「クリスさんは眠ったままですね。なんとか具合が悪くならずにすんだみたい!」
 デービッドも頷きながら、うんと小声で呟いた。
 気がつくと、部屋の中に身を寄せ合い群れ集っている他のカラスたちも目を覚ましたようで、いっせいに翼を広げたりくちばしで体のあちこちをつついたりして身づくろいを始めている。
「みんなのおかげだよ!イジー。あのままにしておいたら、クリスはどうなっていたか分からない。みんなが<名もなき花>にクリスの回復を願ってくれたから、きっと無事でいられたんだと思うよ」
 デービッドが感動した声でそう言うと、イジーは首を大きく振りながら答えた。
「あとは、メリルさんが早く到着してくれることを祈るだけです!」
 イジーはデービッドから離れ、窓際の机の上にとまっているつがいのカラスのもとへと飛んで行った。メリルさんが少しでも早く到着できるように、誰か道案内をたててはどうかと思いたったからである。つがいのカラスはイジーの考えに賛同し、誰が適任だろうか?と互いに首をひねった。
「メリルさんに会ったことがあって、伯爵邸への近道を知っている者ということになると……」


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