ファンタジーガーデン

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童話 メリルさんの悩み 22

 06, 2012 23:53
 つがいのカラスが頭を悩ましていると、近くにいた一羽のカラスが、ふいに彼らに声をかけてきた。
「僕が行ってきましょうか?僕はメリルさんに会ったことがありますし、この屋敷への道案内もうまくできると思います」
 イジーは突然話しかけられ、驚いて声をする方を見返した。
 だが、メリルさんと知り合いだというそのカラスの顔に、彼はどうも見覚えがない。
(このカラスはどこでメリルさんに会ったのだろう?ファンタジーガーデンに来たことがあるなら、僕も知っているはずだけど)
 イジーは一人考えをめぐらし、首を傾げた。そんなイジーの様子につがいのカラスも疑問を抱いたらしく、どこでメリルさんに出会ったのか?とそのカラスに尋ねた。すると彼は、屈託のない明るい声でこう答えた。
「僕はひなの頃、ファンタジーガーデンにいた事があるのです。その当時、メリルさんにはとても良くしてもらいました。ですから、いつかメリルさんのお役にたつことをして恩返しをしたいと思っていたのです。是非僕に道案内をさせて下さい!」
 そのカラスはメリルさんに恩義を感じているらしく、たいそう熱心な口調で何度も自分に道案内をさせて欲しいと申し出た。これに気を良くしたつがいのカラスは、彼に行って貰ってはどうだろうか?とイジーにもちかけた。イジーにしても、自分がまだ生まれる以前にこのカラスがファンタジーガーデンにいたのだと分かると、急に親近感がわくのを覚えていたし、彼がメリルさんに好意を持っているのはすぐに見てとれたので、もちろん異論はなかった。
 イジーは、道案内を申し出てきたカラスに近づくと明るく挨拶をした。
「ファンタジーガーデンからやって来たイジーです!」
 ファンタジーガーデンと聞くと、そのカラスも嬉しそうな声で自己紹介を始めた。
「僕はランディ。メリルさんがそう名付けてくれたんですよ」
 得意げにそう話す彼に、イジーは親しげな口調で自分がメリルさんに拾われてファンタジーガーデンの住人になったいきさつなどを語った。そして互いに自己紹介を終わると、早速イジーは本題へと入った。
 クリスさんの事故の知らせを受けたメリルさんは、おそらく4頭立ての馬車に乗り街へとやって来るだろうということ。メリルさんは街へはほとんど来ることがないため、道に迷う恐れがある。そのため街外れで馬車を待っていて欲しいことなどを話した。そしてクリスさんの病状について、なるべく詳しくメリルさんに伝えて欲しいことなどを言い添えた。
「分かりました!任せて下さい。少しでも早くメリルさんをこのお屋敷にお連れするようにします」
 ランディはつがいのカラスたちに軽く会釈すると、窓際でクリス老人を一瞥したのち、力強いはばたきで空へと舞い上がった。
「メリルさんに会ったら、デービッドが僕らと友達になったことも伝えてね!」
 イジーはそう言って、飛び去る彼の姿をいつまでも見送っていた。


 メアリーは、いったんは寝台に横にはなったものの一睡もすることなく夜を明かしていた。
 外が白々としてくる頃になっても、彼女は息子のデービッドにかける言葉が見つからず、ずっと考えあぐねては悲嘆にくれるのだった。
(私が思慮が足りなかったのは事実だわ。ロバートが帰ってきたら、デービッドに彼からよく話してもらいましょう。そうすれば、今は頑なに私に心を閉ざしているあの子も、考えを改めてくれるかもしれないわ)
 一晩中考えがまとまらず、すっかり麻痺してしまった頭でようやく彼女が辿りついた答え。それを呪文のように、彼女は何度も繰り返し自分に言い聞かせるのだった。
 夫ロバートなら、デービッドにうまくとりなしてくれるだろう。そう考えることだけが、今の彼女の唯一の希望となっていた。
(まるで、あの時と同じだわ。お兄様と喧嘩してチャールズに仲直りさせてもらったあの時とーー)
 ふとメアリーの脳裏に、幼い頃の記憶が鮮明に蘇った。
 それはメアリーが10歳の時だった。
 3歳年上の兄ベンジャミンの留守中に、メアリーは兄が大事にしていた釣竿を持ちだして魚釣りに出かけたことがある。この時チャールズも一緒だったが、メアリーは釣竿が兄ベンジャミンのものであることは彼に内緒にして出かけたのだった。
 ところが、早瀬で釣竿を垂らしていたメアリーは、釣り針にかかった魚の思いがけない力にうっかり竿を持ってゆかれ、借り物の釣竿を川に流してしまったのである。
 メアリーは驚き慌てたが、もはや後の祭り。泣きじゃくるメアリーを見て、チャールズも腰まで川につかって手を伸ばし、何とかメアリーの釣竿をつかもうとした。しかし流れが早く、チャールズはすんでのところで釣竿をつかみそこねてしまったのである。
 すっかり沈み込んでいるメアリーを心配して、チャールズは彼女を家まで送って行くことにした。
 すると帰宅していたベンジャミンが、メアリーが釣竿を持ちだしたことを知ると、烈火のごとく怒り出し、そのとき初めて、チャールズも釣竿が実はベンジャミンのものだったと知ったのであった。
 チャールズは釣竿を無断で持ち出したことは確かにメアリーが悪いとは思ったが、仁王立ちしているベンジャミンの前で顔を泣き腫らしているメアリーを見るとさすがに気の毒な気がした。そこで彼は、ベンジャミンにメアリーをどうか許してやって欲しいと何度も頼み込んだのである。
(チャールズはベンジャミンにとても好かれていたわ。だからあの時も、チャールズがそこまで言うならとお兄様も許して下さったのよねーー)
 メアリーは今は亡き兄を思い出し、懐かしさに胸が熱くなるのを覚えた。



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